捧げもの
□幸せってのは
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本日最初の任務は子守りだ。
子守りくらいなら下忍でも十分ではないかと言いたいところだが、お偉いさんの子どもらしい。
かなりやんちゃで我儘な男児らしく、機嫌を損ねず、危険な事をさせないようにとのお達しだ。
…オレとナルトって…人員不足とはいえ、完璧に人選ミスだろ。
と言っていても仕方がない。
シカマルとナルトは依頼主の屋敷へ向かった。
「またよろしく頼むわね」
必要以上に高い母親の声に見送られながら、もう二度とごめんだ、とシカマルは思った。
あの奔放さ、横暴さ。
こいつはどこぞの暴君になるための教育でも受けているんじゃないだろうかと疑ったほどだ。
さすがのナルトもげんなりした様子で、大人しく足を動かしている。
「オレってば、火影岩にイタズラ描きしたくらいで大きな事したつもりでいたけど…全っ然小さかったって…今日思い知ったってばよ…」
少々論点がずれている気もするが、ナルトの言いたいことはよくわかった。
いきなりこれでは、この先が思いやられる。
シカマルは人差し指で頬を掻いた。
まぁ淡々とこなすしかねーだろーな。
スッと目を瞑ったシカマルが次に目を開いたとき、
時は週末の夜へと移り変わっていた。
身体は、10トンの重りを背負ってフルマラソンを完走した後のような疲労と倦怠感に満ちている。
この任務さえ片付けちまえば、明日は休暇だ…。
背後に迫る底無し沼に倒れこまぬよう、必死に目を見開き、足を動かす。
視線を上空に泳がせれば、心地よさげなベッドが目の前に浮かんだ。
おいおい、なんてもん見せやがるんだ。
「随分お疲れみたいだネ」
カカシがからかうように声を掛ける。
「…まぁそーっスね。一週間、朝から晩までびっしりでしたから」
「ハハハ…ま、新米中忍じゃ仕方ないかな」
そういうカカシの足取りは仕事始めのように軽い。
この非常時だ、上忍ともなればかなりキツい任務をこなしているはずなのに、そんな気配は全く見受けられない。