宝もの
□桜 -サクラ、咲け-
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冬の寒さもようやく一段落し、季節は春になった
春は新しいことが目白押しだ
新しい生活
新しい友達
新しい自分
新鮮で初々しくて甘酸っぱい
そんな季節だと思う
私には『サクラ』という、春の花の名前が付いてる
でも、あんなに綺麗ではかない花とは対称的な私
『サクラってさ、いい名前だけど実際名前に負けてるよね』
アカデミーの時、私はくの一クラスでよくいじめられていた
おでこが広いから『デコリン』ってあだ名も付けられていた
でも別にアカデミーで友達出来なくっても大丈夫、ちゃんと授業してれば卒業して立派なくの一になれるからって、自分に言い聞かせてたんだ
勉強は嫌いじゃ無かった
だから成績も良かったし、両親や先生からも期待されていた
他の同級生からどう思われていても、勉強が出来ていれば文句もないだろうって思ってた
でも、忍者になるってそういうことだけじゃダメなんだって知った
「くの一は敵地侵入をスムーズに遂行し、かつ普通に振る舞えなければならないのです。あなた達は女性らしさという面でまだまだ欠けている部分があります。そこで、本日は華道というものを学んでいただきます」
くの一クラスのスズメ先生は怒ると怖かった
けれどそれ以上に、私は華道や茶道…とにかく女性らしさを磨くという勉強は苦手だったのだ
その頃私のことを1番理解してくれていて、からかうクラスの子達から守ってくれていたのが、山中いの
彼女はなにより人気があり、忍びとしてのセンスもあった
自宅が花屋だからか、いのはこういった授業では実力を遺憾無く発揮していたし、私にも優しく接してくれた
「あんたさー、サクラっていい名前なのにそんな暗い顔してたら勿体ないよ?」
花を摘んできて生ける授業中、お花畑でいのにこう言われた
サクラという名前は確かに可愛らしくて可憐なイメージだけど、私には似合わないとずっと思ってた
「あんたなんて、まだ蕾ってトコよ!チャームポイント隠してたら、陰気に見えるじゃない?わざと出してやれば、雰囲気なんてガラッと変わっちゃうんだから!」
そう言って私に赤いリボンをくれた、いの
家に帰って、鏡の前でいのに貰ったリボンをつけてみた
やっぱり、私なんかには似合わないよ
こんなに派手じゃ、また他の子にからかわれちゃうよ
とにかく自分に自信がなかった
でも、矛盾してるけどいのみたいな性格に正直憧れていた
せっかくいのがくれたんだから、明日して行こう
次の日、気にしていたおでこを見せて赤いリボンをしてアカデミーに行った
周りの子は私を見て何か言いたそうだったけど、いのが真っ先に飛んで来た
「サクラ!やっぱりアンタ、おでこ出した方が可愛いじゃない!似合ってるわよ!」
私の目の前で明るく笑う彼女につられて私も笑う
「ありがとう、いのちゃん」
「これからは桜の花に負けないくらい綺麗な花咲かせてよねっ!」
あなたがいたから、ここまで来られた
でもこれからは、あなたを追い掛けているばかりじゃいられないわね!
この額あてを、額に着ける時
それは、対等な忍びとして闘う時よ!
いの…私、今のあんたを越えなきゃ意味ないから!
サクラ、咲け