宝もの

□耳元で囁いて
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「新年あけましておめでとう!」


「やけに清々しいなお前。よくあんだけ飲んで翌朝ぴんぴんしてられるよな」



1月1日、高らかなインターホンの音で目を覚ました俺は、昨日焼酎の瓶をラッパ飲みしていた彼女を部屋に入れた。


おかしい。ぜってぇ普通の人間じゃねぇよ。
ベロンベロンに酔って、俺におぶられて家まで帰ったくせに朝になったらケロリとしてやがる……俺なんてまだ頭ん中ジングルベル鳴ってっぞ?




「あぁー、じゃあゲンマもお正月は一人派かぁ」

「お前の所為で二人になったけどな。」

「え゙?何それ彼女と二人はヤなわけ!?うわー最悪だゲンマ」



別にそうじゃねぇけどよぉ……いや、ほんとわりぃけど頭やべぇんだって。
割れるっつーか、頭が大震災なんだよ…



「あーあ、こんな冷たい男と付き合うんだったら、やっぱカカシさんにしとくべきだったかなぁ…。将来有望で社長からも信頼されてるし…紳士的だし…」


あ゙!?カカシさんだ?なんであんなやつなんだよ(上司だけど)
あんなマスクスケベのどこが…



「こないだ夕食に誘われたんだよねぇ〜。…まあ断ったけどさ」



油断も隙もあったもんじゃねぇな…
カカシさん、か…要注意だな…




「ってちょっと。聞いてんの?」

「ん………」



何だか無性にイライラしてきて、唸るような返事をしたら、はぁっとため息が返ってきた。



「ねーえ。イライラするとき爪楊枝ゆらゆらしたまんま黙んないでくれる?目付き悪いし」


「生れ付きなんだからしょーがねーだろ」


「もー、しょーがないなぁ」



背を向けて押し黙っていると、ふわりと背中がぬくもりに包まれて、やわらかい髪が首筋を滑った。



「機嫌なおしてよ。お雑煮作ったから。食べて」


「お前がカカシさんのこと出してくっからだろ」


「だってゲンマがさー、相手してくれないんだもん。」


「なんだよ、今日はやたら甘えるな」


「んー…」




背中に抱きついたままゆらゆら揺れてる彼女を巻き込んでコタツに滑り込むと、以外ときつい事がわかった。一人だとちょうどいいんだけどよ。新しく大きいの買うか…



「ねー、これきつい」


「あー。次は大きいの買いに行くか」



ごくごくフツーに提案すると、飛び上がったこいつはコタツの足に肘をぶつけた。だからせめぇっつただろ。何やってんだよそそっかしいな。



「え、え!それってさ!ゲンマ、あたしと一緒に入れるの買おうってこと!?」


や、それ以外ないだろうよ。




「えー、じゃあじゃあ!ソファーも変えようよ。あ!あとテレビもおっきいのにしてさ……いっそ新居たてるとか!」



「…お前、マジで言ってんのか?お前そのことばの意味分かってんの?」



「へ?分かってるよ。当たり前じゃん」



じゃんじゃんっ!と楽しそうに笑う彼女を驚いて見つめていたら、不意に首に腕を回して抱きついてきた。


ハグ好きだな。お前。




















「今年は特別な年にしようね。旦那さん」







(あけましておめでとう)




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