宝もの
□不意打ちの後には
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今日はすごく疲れた。
なにせ朝にBランク、午前から夕方までナルト達とC・Dランク、そんでもって、その後Aランクと遅めの夕飯づくり。
実はコレが三日続いている。
里親になってから、ちゃんと夕飯を作って食べるようになったから、洗い物は手伝ってもらってるけど、これがかなり堪える。
あんまり熟睡しないタイプの俺も、ベッドに身を委ねた瞬間に頭の鈍痛がとれて睡魔が襲ってきた。
こんな時、燕は幼いながら気遣って静かに隣に潜り込んできてくれる。
「ありがとな」
絶対零度の君へ‐番外編‐
カーテンの隙間から差し込む朝日で、一瞬だけ、薄く目蓋が開く。
相変わらず睡魔はまだ健在で。
頭も半寝の状態だったと思う。
でなければ、隣で俺の背中にぴったり寄り添って眠る小さな燕を………パックンとは間違えない。
てか、どんな場合でも犬と人間は間違えないよね。
でも、今回はもう抗い様のないくらいの眠たさで、
とん、と触れたそれを愛犬だと認識して自分のほうに引き寄せた。
まだ燕とは一緒に暮らし始めて日が浅いし、一人暮らしが長かったせいか自分と添い寝をするのはパックンぐらいだろうと回らない頭が判断したんだろう。
寒い部屋の空気とは違って、ほっこり温かい布団を被って寝ていたから、ひんやりとした柔らかい燕の身体はやけに気持ちが良くって。
ぎゅうっと抱き締めて、その肩口に顔を埋めた。
あ、でも別に年中こんなに過激なスキンシップをパックンにしているわけじゃないよ。とにかく、心身ともに…もう脳髄の深ーいところまで、疲れたんだな。
耳元で小さく漏れる吐息が子守歌みたいで、ゆっくり息を吸い込むと甘くて、でも香水とかと違う…どこかで嗅いだことのある薫りに、思考がすぅっと持っていかれた。
微睡むって、こんなに気持ちが良かったんだなぁ…とか。(普段は割りとスパっと起きるしね)
恥ずかしながら自分ではパックンの肉球をぷにぷにしているつもりで、指先で柔らかいそれを優しく揉ん………いじっていた。
不意にもぞもぞと動きだした腕のなかの……パックン…じゃなくて燕を、動かないように強く胸板に押しつけて、ぎゅーと抱き締める。
そのとき、
「……ふにゅっ」
「……」
あ れ ?
小さく漏れたその声に、ふよふよしていた平和な時間は、終わりを告げたわけ。
目を開けた自分の顔のすぐ傍に、ぱっちり開いた燕の目があって、その顔は見る見る赤くなっていった。
肉球だと思って触っていたのは耳たぶだったらしい。
思考回路は一瞬フリーズして、まず最初に浮かんだ疑問符は
why?
まぁ、燕にしてみれば「そりゃこっちの台詞だ!」なんだろうけど。
「あ…えと…燕?」
寝癖が付いた頭を掻きながら尋ねると、燕は潤んだ目でギロッとこちらを睨んだ後、ふいっと背を向けて、これでもかと言うくらいに身体を縮こませた。
後ろからでも分かるくらいに真っ赤になった耳。
あれ?もしかして…?
「燕?」
「ぎゃー!触るなドスケベ変態バカカシー!!」
「な、バカカっ…―!?」
手を伸ばしたら思いっきり叩かれて、どぴゅーんと凄いスピードで逃げていった。あ、意外と足早いのね。
多少バカカシと言うのに傷つきつつ、首裏をぽりぽり掻いていたら、ボンっという音と共に、正真正銘パックンが姿を現した。
「カカシ…おぬし…」
「ん?何よ、パックン。突然…」
「……あのー……それは………犯罪だと思うぞ?」
「ぶっ!!!」
あまりの発言に思わず吹いてしまって、反論しようとしたらもうパックンはいなくなっていた(多分燕のとこに行ったんだろう)
それにしても、初めてだったな、あいつが動揺したの…
「あー―…」
一人になった部屋に、いつもより幾分低い寝起きの声が響いていた。
不意打ちの後には
《その後、待機所にて》
「ねぇゲンマぁ」
「ん?なんだ燕。」
「あの、さ……ロリコンってどういう意味?」
「ぶはっ!!……は!?」
「パックンがカカシはロリコンだって」
「ちょ、おま…カカシになんかされなかったか!?」
「あ、なんか今朝ね――」
「わー!!燕それ以上言っちゃアカーン!」
―――いつもの日常が待っているから。
(へー…カカシって≪黒笑)(や、待ってゲンマ!ちょっと待って!!)
end.