宝もの

□同僚に同情
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「ってことで、今日は俺が隊長だから。よろしくね」





「っす」

「はぁい」

「うん。りょーかい!」













アスマが急遽任務に行くことになり、代理を頼まれたカカシ。

第十班とは以前も任務を共にしたので、特に問題はない。









…ないんだけど。









「ねぇねぇ、なんで時間どおりにきてんの?カカシ先生」



「知らねーよ。俺だって年がら年中ナルトから遅刻魔だって聞かされてたんだからよ」





「どうしちゃったんだろうカカシ先生…やっぱ僕達だから緊張してるのかな…」





「「いやいや、ないない。それはない」」













「…お前ら結構失礼なこと言うね」









「だって、事実だもん」









時間通りに待ち合わせ場所に現われたカカシを見て、いの・シカマル・チョウジ…第十班のメンバーは訝しげにひそひそし始める。

カカシはため息を吐くと、彼らに呼び掛けた。









「よし、じゃあ任務に行くぞ。今日はこの間の長雨で崩れた土砂を片す作業だ。Dランクだが力仕事だ。ま、頑張れよ」









「あーあめんどくせぇ。」



「アスマ先生絶対逃げたわね!ずっるーい」





「……お腹減った」









と言った具合に、口々にぶーたれる三人を急かして現場につれていく。















「あー…コレは大変そうだね」











崩れ落ちた土砂は道を塞ぎ、近くの民家まで押し寄せていた。

中にはかなり大きな岩や木々が交ざり込んでいる。

なかなか骨が折れる作業になりそうだ。









「こりゃ一日丸々使いそうだね。休憩にするときは言うから。何かあったらいってね」





そう言い残して、イチャパラを読みながら立ち去ろうとするカカシを見て、いのが「えっ!?」と声を上げる。









「手伝ってくれないの?」





「ん?まぁ少しはやってやってもいいけど?」







「そんなぁ…アスマ先生は一緒にやってくれるのに…」











……へー、アスマ手伝ってやってるんだ。意外と部下に優しいのね。









「もう何だっていいからよ。早くやっちまおうぜ。めんどくせぇけど。」







シカマルの声でやっと、十班は立ちはだかる土砂に向かって歩きだした。













  



**********







「はい、お疲れさん」









――夕方。







塞がれていた道は綺麗に整備され、地盤のゆるんだ場所はしっかり固定されていた。

「あー疲れたぁ」の言葉すら出ないくらい疲れてしまったようで、三人とも地面に横たわったまま暫らく動けなかった。









……ずいぶん頑張ってたし、なんか奢ってやるか。









カカシの提案に真っ先に乗ったのはもちろん、







「焼肉だーー!!」



「うるせぇチョウジ」



「あー今の声で頭ぐわんぐわんするー!!」













(しかしまぁ…。)









チョウジの要望で「焼肉Q」へ向かう途中、カカシは今日一日を振り返りながら思う。











大変だぁ大変だぁと、二人で飲みに行くとき零すアスマだけど、結構扱いやすい子たちじゃないの。





まず、任務がスムーズね。

俺の班の場合ナルトとサスケが啀み合ったり、ナルトがヘマしたり、とにかくつっかえつっかえだし。





その点、十班は役割分担と言うか…シカマルが影真似で岩を押さえてる間にうまい事いのとチョウジが固定する……と言った具合に、チームワークがとれているし。













「アスマが羨ましいねぇ」







ぽつりと呟いたカカシの言葉に、シカマルが振り返った。









「カカシ先生、多分その考えはあと数分で吹っ飛ぶと思うっすよ」





「?」









その言葉の意味を考えるうち、店に着いてしまった。







そして、カカシはシカマルの言葉の意味を身を持って知ることになる。













「あのー……シカマル君?」





「なんすかカカシ先生。」







「彼はさ…いや、俺も少しは覚悟してたけどね…ただこの量は…」







「あー、今日は疲れた分いつもより多く吸収してるんすよ」







「いやいや!多いとかって言える分じゃないでしょーよ!噛んでないじゃん肉!飲んでるよあれ!ほら見てあ・れ!」





「チョウジの場合肉が体内に"流されていく"っつーのが正しいっていうか…」







「俺の財布に限度があるんだけど」







「今のチョウジの腹に限度はないっすよ」







「……」







「ま、アスマは年中じゃないけど、よく味わってるっすよ?」







「年中じゃ死ぬよ」







「カカシ先生食べないんすか?」









シカマルが聞くと、クワッと目を見開いて「何言っちゃってんの?!食べられるわけないでしょ!」と財布を振る。(余裕がないの意。)









「秋道家の食事代が知りたいよ本当!」





「ふーん…………マジで知りたいっすか?」











「……やっぱいいや」









どんよりと肩を落とすカカシはぼそりと呟いた。







「だからあんなにデ」





「「ストーーップ!!」」





シカマルといのの声が見事にコーラスした。













**********





翌日。









「昨日は急で悪かったな、カカシ。」





「え、ああ昨日…」









――昨日の事思い出すと胸焼けがするんだよね…









「お礼に一杯奢ってやるよ」







そう言ってカカシの方を見ると、何故か哀れんだ様な瞳が見つめ返してきた。









「無理しなくていいよ、アスマ。お前はいつも大変なんだから。」



「は?」



「今日は俺んちでゆっくりやろう。あ、いいよ。酒は。俺が払うから」



「何言ってんだよ。いいよ、割勘で…」



「ダメダメ。あ、そうだ、テンゾウに払わせよう。あいつはお前ほど苦労してないんだから…」





「……」













同僚に同情



(紅…なんかカカシが変なんだけどよぉ)

(何言ってるの。いつも変でしょ)



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