宝もの

□ホワイトシュガー
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「わぁ、覚えててくれたんですか」


「あったりまえじゃないの。俺が忘れると思う?」




3月14日。バレンタインの時はやっぱり女主体だから盛り上がっているけど、どうもホワイトデーは忘れがちだ。



いつもお世話になってます、とカカシさんに渡したカカオ70%の苦めなチョコのお返しを渡されたとき、一瞬今日が何の日か考え込んでしまった。



口布と額当てで顔がほとんど見えないけれど、にこにこと笑ってくれている彼をみると自然に頬がゆるむ。




「あ、やっと見つけた…って、カ、カカシ先輩…」



微笑ましい場面に突如声が掛かったかと思うと、その声はしまった、と言うニュアンスを含むものに。



「ちょっとヤマト、なぁーにその言い方。俺がいちゃ嫌みたいな言い方じゃないの」


「いやべつに…」





…こういうとき助け船を出してあげるべきなのだろうが、生憎私はそういった気遣いが得意ではない。ごめんねヤマト上忍…




「もういいよ。今日は許してあげるけど後できっちり落とし前は付けてもらうよヤマト!」




心なしかヤマト上忍が震えてる気が…忍の上下関係ってすごいなぁ




「ところで、ヤマト上忍?私に用があったんじゃ?」


「あ、そうなんだ。えと…あのね、僕きみにバレンタイン貰っただろ?だからお返しをしようと思ったんだけど…」



少し照れ臭そうに話すヤマト上忍はなんだか可愛らしい。



「皆と被っちゃいけないと思って考えたんだけど分からなくてね」


「そんな!気を遣わせてごめんなさい…」


「いや、僕が望んでやってることだから。ところで…」



そこで上忍は言葉を切ると、真っすぐ私の瞳を見つめた。
幾分高い先輩の視線を見上げるように受けとめると、目の前の先輩がにっこりとほほえんだ。




「今夜、僕に食事を奢らせてほしいんだ」



ちょっと不安そうに「いいかい?」なんて聞いてくる上忍を見ていたら、不意に胸が熱くなって、その問いに答える代わりにやわらかく笑みをこぼした。




ホワイトシュガー

(その胸の高鳴りは)(白くて甘い恋の予感)

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