捧げもの
□かける想い
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雨隠れは雨が多い。
そういう地域で、そういう地形なのだから仕方がない。
シトシトと降り続く雨は、里の人間にとって、もはや馴染みのものであり、あって当たり前の光景である。
誰もがそう思っているであろうと、ペインは特に気にしてもいなかった。
だから、彼女の一言は、彼を混乱させるには十分だった。
いつも通り、取り留めるほどの表情も浮かべず、静かに小南が部屋に入ってきた。
「ねえ」
「なんだ」
「この雨はいつになったら止むのかしら」
「………」
唐突な小南の発言に、意図が掴めず、ペインは適切な返答を捜し求める。
「聞いているの?」
「ああ」
「この雨はいつになったら止むのかしら」
「さあな。元々雨ばかり降っている土地だ。気にしていても仕方がないのはお前もわかっているだろう」
重ねて問われたので、無難な受け答えをした。
この地域の人間が真っ先に思い浮べるであろう返答だ。
しかし、小南は納得するどころか、今、彼女の瞳は氷点下ではないかと思われるほどの冷たい視線を送ってきた。
「あなた、何もわかっていないのね」
言い放つ口調はいつもと変わらないのに、その時の小南の言葉には、恐ろしいほど鋭い刺があった。
ペインは思わず息を飲む。
もしかして、怒っているのか。
…まさか!
食卓に置いてあった焼き魚つまみ食いしたのがバレたのか。
気づかれないように、つついた部分を裏に返したというのに。
だがしかし、そういうことであれば、早い段階で謝ってしまうのが得策というもの。
よし、素直に「すまない」で行こう。
「小南…すま」
「これを見て」
小南が胸元から何かを取り出した。
ペインは慌てて口を塞ぐ。
それは彼女にとってはお馴染みの折り紙だった。