捧げもの
□悪くねーよな
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先程から思っていることだが、今日はやけに道中声を掛けられる気がする。
シカマルは、締まりのない顔でのどかな里を歩いていた。
午後一で母親に買い物に出され、キバとシノに出くわしたのを皮きりに、すでに五回。
まだ目的地に辿り着けてもいねーのに。
渡されたメモをちらりと覗き、量の多さにげっそりする。
また一人、アカデミー時代のクラスメイトに出会った。
一度班に分かれての下忍昇格試験に落ちていたが、その後無事合格し、今では自分達と同じように日々任務をこなしている。
懐かしさもあってしばらく話し込んだ。
本当に多いな。
まぁこんな日もたまにはあるか。
形を変え、やがて遠くに流れてゆく雲のように、シカマルの思考は頭の隅へ通り過ぎていった。
「おい」
右方から声が掛かった。
その声には聞き覚えがあったが、声が掛かるのはずいぶんと珍しいことだ。
「ネジか」
呼ばれた方を振り返ると、リーとテンテンの姿も見える。
「やっほー。シカマル」
「オッス!」
テンテンがにこにこと手を振り、リーが敬礼のポーズを取った。
「うっす。珍しいな、あんたたちがオレに声を掛けるなんて」
「道であんまり会わないだけでしょー。会えば声くらい掛けるわよ」
シカマルの返しにテンテンが苦笑する。
「で、なんか用か?」
用、と言われて、テンテンとリーは言葉に詰まった様子でギクシャクとネジを見た。
ネジは二人の視線を受け、面倒くさそうに目を逸らす。
テンテンが慌てて笑顔を作った。
「別に用って程の用はないんだけどさ。さっきも言ったけど、道で見かければ声くらい掛けるわよ」
ハハハ…という声は引きつっている。
一体なんなんだ?
「そーだ、シカマル君。これからボクたちと、修行しませんか!」
リーが、いかにも名案を思いついたというように声を上げた。
周りの二人がぎょっとした表情になる。
「な、なに言い出すのよ、リー」
「却下だ」
「どうしてですか。だってボクたち、少しでも長い間…」
「わー!!」
テンテンがリーの台詞を遮り、思いっきり口を塞ぐ。
「すまなかったな。本当に特に用はない。見かけたから声を掛けただけだ」
「…あ、ああ。ならいいんだけどよ。じゃあ、そろそろ行くぜ」
「ああ」
もめている様子のテンテンとリーを視界の隅に写しつつ、シカマルはその場を離れた。
ホント、なんだったんだ?