捧げもの
□カカシの誤算
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サスケの投げつける痛く鋭い視線。
それをカカシは、静かで、しかし濃密な思いを秘めた瞳で受け止める。
「サスケ」
発せられる声は、普段よりも低く、重い。
「復讐なんてやめとけ」
サスケの眉間に深くしわが寄った。
「オレは復讐者だ。あいつに復讐するためだけに、オレは生きてきた」
感情を高ぶらせ、声を荒げる。
カカシは短くため息をついた。
「忘れろとは言わない。できるわけもないだろうしな。だがな、過去に囚われたままでは、いつか身を滅ぼすぞ」
そう諭すと、目を険しく細める。
「今ここで、過去と決別しろ」
サスケは、「何を世迷いごとを」と言わんばかりの視線をカカシに向けた。
それには構わず、カカシは話を続ける。
「お前の中でくすぶってるもの全部、吐き出してみろ。
オレが付き合ってやる。
その後、お前に出来た仲間のことをゆっくり考えるんだ。
そうすれば、お前のやろうとしていることがどんなに愚かなことかわかるだろうよ」
サスケは、バカバカしい、と顔を背けた。
下を向いたまま、口をきつくかみ締めている。
カカシは、辛抱強く待った。
静寂が辺りを包む。
サスケは今、二人の己と葛藤しているのだ。
イタチを追う復讐者の自分と、仲間と共に忍の道を歩む自分。
こっちへこい、サスケ。
カカシは切実な思いで、無言の時を見つめた。