捧げもの

□ほんのひと時の帰郷
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「オレをずいぶんと疎んでいたな」

「ほう?何故です?」

「叱咤、激励、賞賛、あいつに与えられるべきものは、全てオレに向けられていたからな」

「できる兄の陰に隠れてしまっていたというわけですか。まあ、あなたが兄では仕方のないことなんでしょうがね」

そう言って、ピク、と鬼鮫は外の気配に反応した。

「だが、あいつはオレの実力をよくわかっていた。自分の実力が遠く及ばないこともな」

「あなたと比べては可哀想というものでしょう。それより…」

「あいつはオレに付きまとっては、修行の相手をねだっていたな」

「そうですか、そうはいってもあなたを尊敬していたのかもしれませんね。それより外に…」

「それから」

…まだあるのですか。

「フッ…あいつは眉間を小突いてやると、嬉しそうに顔を緩めたものだ」

…好かれていた自覚はあったんですね。



「それより」

今度こそ、と鬼鮫が外の注意を促そうとする。

「それより、外からこちらの様子を伺っている者がいるようだ。長居は無用だ。行くぞ」

鬼鮫は、しばらく「り」の口のまま固まっていたが、仕切り直すように小さくため息をついて、席を立とうとした。



その時、外の会話が漏れ聞こえてきた。

「ここで待ち合わせしてんのよ。サスケとね」



「待て」

イタチが鬼鮫を制した。

「何です?」

イタチの返事はない。

「カカシ、アンタが先にいるなんて珍しいな…」

会話の待ち人が来たらしい。

このままでは、下手をすると接触する危険がある。

鬼鮫は訝しげにイタチを見た。

「行くぞ」

次の瞬間、イタチはそう呟くと、間を置かず瞬身を使った。

鬼鮫はギョッとして印を結ぶ。

「何なんですか」

困惑の言葉を残して、その巨体は姿を消したのであった。





そのすぐ後、茶店の前では、三人の上忍による目配せが交わされていた。
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