はんぶんの月
□四章
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「別に、何とも思ってない。あいつは、お兄ちゃんの敵だもん」
そうだよ・・・あいつは、敵なんだから。
気にする必要なんて無い。
あんなキス、忘れてしまえばいいんだ。
「おい、庵」
「な、に・・・っ?!」
突然、総悟に顎を掴まれて。
顔が近づいて来ると思った次の瞬間には唇を塞がれてた。
「何、するの・・・?」
「消毒。お前とキスして良いのは俺だけでさァ。覚えとけ」
「はぁ?」
「今度あいつに会っても、キスさせンじゃねぇぞ」
「あいつって・・・え、まさか?!」
総悟は何も言わずに歩いて行ってしまった。
今の流れからいくと・・・あの時、総悟に見られてたってことだよね。
「うわぁ、最悪じゃん」
総悟のことだ、それをネタにあたしを苛めようとするに決まってる。
参ったなぁ。
「庵?こんなところで何をしてるんだ」
「お兄ちゃん。ちょっとね・・・って、どうしたの?顔が傷だらけじゃん!」
「いや、ちょっとな」
「もしかして、桂にやられたの?」
「そういうわけじゃないんだ。本当、大したことないから」
苦笑いを浮かべて、兄は玄関の方へと行ってしまった。
「待って!どこ行くの?」
「ちょっとな。あぁ、そんな顔するなよ。すぐに帰って来るから」
「・・・行って、らっしゃい」