はんぶんの月

□ニ章
2ページ/7ページ

とある部屋の前で、松平のおやじが止まった。

「おー、此処だ。失礼します、松平です」
「うむ、入るがよい」

なんだか、偉そうな返事。
ダメだ、あたしこういうの大っ嫌い。

「ほら、庵」
「もう、分かったってば!」

あたしは仕方なく部屋に入り、三つ指を付いた。

「近藤庵と申します。この度は・・・」

顔を上げたあたしの眼に映ったモノ。
それは・・・

「苦しゅうないぞ。もっとちこう寄れ」
「・・・・・」

何だ、この生き物。
触覚生えてるぞ。

「・・・帰る」
「待て待てっ!とりあえず、話だけ。話すだけでいいから、ねっ!!」
「はぁー、しょうがないなぁ」

兄に頼まれたんじゃ、断るわけにいかない。
あたしはとりあえず、変な生物の正面に座った。

「余は皇国星の皇子、ハタと申す」
「は。バカですか?」
「バカ違う、ハタじゃ!!」
「あー、失礼しました。バカ皇子」
「そち、わざと言ってるじゃろ!絶対わざとじゃろ!!!」

もう、バカでもハタでもどっちでもいいじゃん。
どうでもいいから、早く帰りたいよ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ