はんぶんの月
□ニ章
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とある部屋の前で、松平のおやじが止まった。
「おー、此処だ。失礼します、松平です」
「うむ、入るがよい」
なんだか、偉そうな返事。
ダメだ、あたしこういうの大っ嫌い。
「ほら、庵」
「もう、分かったってば!」
あたしは仕方なく部屋に入り、三つ指を付いた。
「近藤庵と申します。この度は・・・」
顔を上げたあたしの眼に映ったモノ。
それは・・・
「苦しゅうないぞ。もっとちこう寄れ」
「・・・・・」
何だ、この生き物。
触覚生えてるぞ。
「・・・帰る」
「待て待てっ!とりあえず、話だけ。話すだけでいいから、ねっ!!」
「はぁー、しょうがないなぁ」
兄に頼まれたんじゃ、断るわけにいかない。
あたしはとりあえず、変な生物の正面に座った。
「余は皇国星の皇子、ハタと申す」
「は。バカですか?」
「バカ違う、ハタじゃ!!」
「あー、失礼しました。バカ皇子」
「そち、わざと言ってるじゃろ!絶対わざとじゃろ!!!」
もう、バカでもハタでもどっちでもいいじゃん。
どうでもいいから、早く帰りたいよ。