はんぶんの月

□一章
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「お兄ちゃーん」
あたしは一先ず、兄の側に駆け寄った。

「土方さんたらね、酷いの。あたしのこといじめるのぉ」
「いじめてねェだろ!むしろ、いじめられてンのは俺の方だ」
「土方さん、いけねェんだ。女泣かせたー」
「お前らァ・・・」


土方が刀に手を掛けた、次の瞬間。
能天気な声が聞こえてきた。

「頼みますよ、山崎さん!」
「えー。でも俺、その日はミントンする予定が入ってるしなぁ」
「この通りっ!ザキさんだけが頼りなんです」
「どーしようかなぁ」

土方は方向を変えて、ターゲットを見据えた。
「やーまーざーきィィィ」
「え、副長?ぎゃァァァ!!」
土方は山崎に馬乗りになって、殴りつけている。

「あーあ、八つ当たりしてらァ」
「まぁ、野蛮な方。お兄ちゃん、あんなの放っといて行こう!」
「いいのか?あいつらと遊んでたんじゃ・・・」
「いいの!それよりも、早く二人きりになりたい」

兄は腕を絡ませるあたしに、しょうがないやつだなぁと笑いながら頭を撫でた。
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