紅蓮

□九章
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羅刹扱いの私は、昼間の巡察に同行することは二度と叶わない。

なんて思ってたのに。

何故か私は、数週間で普通の生活に戻ることとなった。
私に羅刹の症状が出なかったのが理由って言ってたけど、どうもそれだけじゃない気がする。

まぁ、何にせよ。
太陽の出てる時間に外を出歩けるのは素直に嬉しい。


「お帰りなさい、翠さん!」
「あぁ、うん。ただいま」
「髪の色、元に戻ってますね。一体あれは何だったんでしょうか」
「さぁ。私にも分かんない。とりあえず、こっちに戻って来れてよかったよ。みんな、変わりない?」

そう言うと、突然千鶴ちゃんの表情が曇った。

「何かあったの…?」
「実は…斎藤さんの様子が近頃おかしいんです」
「斎藤さん?」

千鶴ちゃんの話によると、あれだけ真面目な斎藤さんがここのところ羽目を外しているらしい。
好みの芸妓が居るのか、毎晩のように島原に通っているそうだ。
原田さんとか永倉さんだったらまだ分かるけど、あの斎藤さんが。
何か心境の変化でもあったんだろうか…。

「相当美人なんだろうね。あの斎藤さんを惚れさせるなんて」
「そうですね。私も一度お会いしてみたいな」
「…尾行する?」
「やめた方がいいですよ。あの人、勘が鋭いみたいなので」
「残念。…ところで千鶴ちゃん。今日の予定は?」
「八番組の巡察に同行するつもりです」
「そっか。久しぶりに外に出たいし、私も一緒に行っていいかな?」
「はい!…あ、でも一応土方さんに聞いてみた方がいいかと思います」
「そうだね。じゃあ、行って来る」
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