月と七人の王子様
□Y 霧幻(むげん)
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一か月前、イタリア。
「やっぱり止めようよ、華奈」
「止めない!せっかくイタリアまで来たんだ、このまま何もせずに帰れない」
二人が向かうのは、ヴァリアーの拠点。
目的は凛の婚約を解消することだ。
「あたしの親友を、あんな暴力ヤローに渡すわけにはいかないよ。あんたにはもっと相応しい人が居るから」
「…たとえば?」
「幻騎士とか」
「……うげっ」
心底嫌そうな顔をして、凛は頭を抱えた。
「まぁ、冗談はさておき。XANXUSなんかと結婚してみ?100%幸せになれないと思う」
「それは言いすぎじゃ…」
「あたし的に納得できないの。…あぁ、着いた。此処だね」
二人の前に現れた、無駄に豪華な邸。
躊躇うことなく、華奈は声を張り上げた。
「すんませーん、日本から来た雲雀と申しますけどー。XANXUSさんとお話させてくださーい」
「大胆だな、おい!」
凛がヒヤヒヤしてると、邸の門が開いて。
中から緑色の髪の少年が顔を出した。
「あきらかに不審者ですよねー。ってことで、死んでくださーい」
「ま、待って!!あたし、高橋凛です。XANXUS様の…許婚です」
「あぁ、あなたが。分かりましたー、入ってくださーい」
二人は顔を見合せて、少年を追って邸の中へと足を踏み入れた。