月と七人の王子様
□X dream
1ページ/6ページ
何も無い、真っ白な空間。
上下左右も、自分が立っているかすらも分からない。
此処に来るのは、二度目だ。
「おやおや。迷い込んでしまったようですね」
「カミサマ?」
「僕が神、ですか。クフフ、面白いことを言う」
「…!!」
何処からか霧が現れて、人の姿を形作っていく。
霧が晴れた時、其処に居たのは…
「きみは…」
「初めまして。僕は六道骸」
「あたしは…華奈」
骸は人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた。
きっと、みんなこれに騙されるんだよね。
「不思議ですね。初めて会ったはずなのに、ずっと前からあなたを知ってる気がします」
「…その口説き文句は古いと思う」
「おや、口説き文句とは心外だな。僕は思ったことを言ったまでですよ」
どうだか…。
更に突っ込むのも面倒だから、あたしはふーんと相槌を打った。
「華奈さん、今なにか悩んでいますね?」
「あはは、初対面の人に指摘されるなんて思ってなかった。うん、確かに悩んでるよ」
「僕なら、そんな思いはさせない」
「へ?」
「黒曜にあなたの居場所をご用意しますよ」
「…っ」
心の中を見透かしたような骸の笑みに、あたしは背筋が寒くなった。