月と七人の王子様
□W エンジョイ
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翌朝
「おはよう、雲雀さん」
あたしは居間の襖を開けて、朝食を口にする雲雀に声を掛けた。
何故か彼は眉間に皺を寄せてあたしを見てる。
「何?」
「…何度も言ったよね、きみは僕の姉さんだって」
「うん、聞いたけど」
「だったら普通、呼び方変えない?言っておくけど、きみの苗字も雲雀だからね」
「……あ」
すっかり忘れてた。
この世界で、あたしは雲雀の姉なんだっけ。
でもなぁ。
いきなり名前呼び捨てとか、できないし。
「じゃあ…恭弥君、とか」
「…まぁ、いいんじゃない」
雲雀は、視線をあたしから再び朝食に戻した。
「ねぇ、あたしの分は?」
「台所に用意してあるよ。僕と一緒に食べたいなら持って来れば」
「ん、分かった」
あたしは台所に向かいながら、昨日のことを思い返していた。
原作と食い違う点が多いこの世界、存在するはずの無い【あたし】のこと。
考えれば考えるほど、深みにはまっていく。
こんな時、親友だったらこう言うんだろうな。