はんぶんの月

□三章
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「狂乱の貴公子、桂小太郎・・・」

見回りの途中。
ふと、お尋ね者のポスターが目に入った。
桂は攘夷派・・・つまり、あたし達真選組の敵。

「なかなか美形じゃない。・・・って、あたし何言ってンの!」

いくら美形でも、犯罪者と知り合いにはなりたくない。
つーか、あたしには兄が居るし。

「こいつ、お兄ちゃんよりちょっと見た目が良いけど。でも、性格悪そうだし!」

でも・・・顔は綺麗なんだよね、顔は。
テロリストじゃなかったら知り合いになりたいんだけどなぁ。

「・・・いかんいかん。見回りの途中じゃないの、あたし」

方向を変えて、屯所の方に歩き出そうとした刹那。
数人の浪士どもに囲まれた。

「なに?あたし、急いでンだけど」
「貴様、真選組か?」
「見りゃ分かるでしょ。制服着てるし」
「天下の真選組に女が居たとはな」

浪士どもは心底おかしそうに、あたしをあざ笑う。
あー、腹立つ。

あたしは刀の柄に手を掛けた。

「あたしはねぇ、これでも剣術道場の娘なの。そこら辺の女と一緒にされンのが・・・大っ嫌いなんだよ」

ドスを効かせて睨むと、浪士どもが少し怯んだ。
情けないな、男のくせに。

「貴様、俺達とやろうってのか?!」
「上等。やってやろうじゃん」

互いに刀を抜き、睨み合った。

でも、次の瞬間。


「止めんか、お前達。女子に刀を向けるとは、武士の風上にも置けんな」
「・・・っ」

あたしの目の前に現れたのは、指名手配中の攘夷浪士・桂だった。
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