06/07の日記
16:42
イチコ語り 死期檻々
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◆追記◆


イチコの暴走する片想い語り


ルプスさんに片想いして、毎日一生懸命アタックしてるイチコ。ルプスさんの反応はとても良いとは言い難く、むしろ適当にあしらわれる繰り返しの日々。
そんな中、ある日の食堂で、ルプスさんに好意を抱いてる女性が他にもたくさんいる事を知る。
ルプスさんは人好きじゃないし、寡黙だし、女性苦手だし、一緒にいるマオさんの方が目立つし、ライバルなんていないと思っていたイチコは大きな衝撃を受ける。

"いやでも、仮に他の人が告白とかしてもルプスさんの事だから、受けるとかないない。あり得ない"

とは思うが、相手にされない日々を思い出して落ち込むイチコ。

“そうだそうだ、あり得ない……あり得ないんだから……”

そのあり得ない中にはイチコも入ってるのだろうか。
毎日のようにアタックしているけれど、ルプスさんには届いているのだろうか。
このままアタックを続けていけば、希望はあるだろうか。
物を贈ったって、言葉を贈ったって、本当に欲しい言葉は返って来ていないのに。
届いていなければ、他にどんなことをすれば届くだろうか。

“物でも言葉でもだめなら、もう体当たりするしか……。いやでも、この方法使ったら確実に嫌われる……だめだよ、私。だけど……”

頭の中に、ルプスさんに近づく女性の姿が、隣に立つ自分ではない女性の姿が浮かぶ。
そこに立ちたいのは、私なのに。どうして私は、まだ立ててないんだろう。



気づいたら、いつもの訓練所に足を伸ばしていたイチコ。
誰もいない、がらんと静まりかえっている。
いつもルプスさんが陣取っている場所に腰をおろして、膝を抱える。
しばらくそのままでいると、すぐ側で舌打ちをする声が耳に届いた。
今、イチコの最も頭を悩ませているルプスさんが、眉間にしわを寄せて見下ろしていた。

“何をしている”

“……考え事。でも、頭で悩んでも解決しなかったから、ちょっと組み手付き合ってよ”

頭はもうぐちゃぐちゃだ、行動するしかない。
嫌われてもいいから、私の想い知って欲しい。




いつものように始まった組み手だが、今日のイチコは本調子ではないと、二人ともすぐに気づいた。拳を交える度に、足を振り上げるほどに、視界がぼやけていく。頬に、汗ではない雫が流れる。
ルプスさんの口が動いてる。何か言っている。
イチコは見なかったことに、聞かなかったことにして、組み手を続けた。
止まらないイチコを、ルプスさんが足を払い、無理矢理組敷く。
イチコは背中から倒された。
イチコとルプスさんの視線が交わる。
すかさず、イチコがルプスさんのネクタイを引っ張り、顔を近づけさせて、唇を奪った。
泣きながら、角度を変えて、深さを変えて、何度も何度も奪ってやった。

ルプスさんは私をどう思ってるの。
嫌いなら嫌いって言ってよ。突き放してよ。私の心を傷つけて、もう二度と好きって言えないくらいに。
もう二度と、恋なんてしないって思えるくらいに。

そう言ってやりたかったのに。

“すき……”

か細い声が放った言葉は、たったの二文字だった。



2017/06/07 16:42
カテゴリ: 死期檻々イチコ
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