短編

□小鬼は優しいママが欲しい
15ページ/16ページ

小鬼の嫌いなもの

 テレビをつけると、ワイドショーが面白おかしくW不倫をしていた俳優と女優夫婦の話題を流していた。どうして不倫に至ったのか、それまでの結婚生活はどうだったのかと、根の奥の奥まで調べられている。
「くだらない」
 欲に溺れた他人(ひと)の末路なんて、どうでもいい。
 つけたばかりの電源を切り、ソファーにダイブした。

 突然ですが、俺にも【実の両親】という者は存在する。
 父は空港で働く管制官。母は、市民を守る警察官。
 真面目で正義感のある仲の良い両親、衣食住にも恵まれて、なんてハッピーな生活なのでしょう…………なんてことにはならなかった。
 俺の両親は、俺が小学生三年生の春に離婚していた。その事を知ったのは、離婚した年の冬に入ってからだった。
 破綻のきっかけはどこだったか。二年生の時に、実父が関西に転勤したところだろうか。自由を得た実母は実父の同僚と不倫に明け暮れ、転勤から一年経った頃に離婚した。そして、不倫相手とすぐに再婚。それが冬、俺が離婚を知ったきっかけ。
 俺が何も知らないのをいいことに、実母は親権を取り、俺の名字も変わった。
 俺は、父と母どちらが好きかと聞かれたら、間違いなく父だと答える子どもだった。母はその事を知っていたから、何も言わずに事を進めていたのだ。世の中は、子どもがいると有利になることが多いから。それに、夫に捨てられた可哀想な妻を演じることも出来る。実際に捨てたのは、母親の方なのに。
「気持ち悪い……」
 離婚した頃から、母に対して不信感を抱いていた。そして、今年の二月に俺の不満は爆発した。父さんから送られて来る養育費に、母が手をつけようとしたからだ。
「クソババア」と言ってやった。結果、頬を思いっきり叩かれた。
 痛かった。腹が立った。それ以上に、泣きたくなって仕方なかった。
「キモチワルイ……」
 欲に溺れたやつなんて、大嫌いだ。
 親権変更の申し立てまで、あと二週間。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ