短編
□小鬼は優しいママが欲しい
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いつかの空
ぶぉーっと水の上を蒸気船が進んでいく。
川を沿うよ ぶぉーっとうにして作られた線路の上を蒸気機関車が走り、時折汽笛が鳴らされた。
機関車に乗る乗務員が、地上を歩く者たちに手を振る。
ガタゴトと忙しない音を耳にしつつ、線路下を潜り、水辺の側に置かれたベンチへ腰をおろした。
『お前、今日もそっちに行ってんの? 好きだねえ、舞浜』
耳に差し込まれたままのイヤホンから、寺の孫の呆れた声がする。
その声に「うん」とうなずきつつ、背負っていたリュックからタブレット端末を取り出した。
「だってさ、たまには二人っきりにしてあげないとじゃん」
親孝行な俺、超優しい。
明るい声音で笑って見せると、イヤホンの向こうでため息を吐かれた。
『見える、見えるぞ……。このあと、思いっきり邪魔しに行くお前の姿がな』
「そんな酷いことしないって」
答えながら、タブレットの電源ボタンを押す。
画面が点灯し、青い空の下で笑いあう家族の姿が表示された。