倉庫

□空に轟く
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 ◇  ◇  ◇


 ピッピィーーッ!


 試合終了の笛が鳴る。
 会場に鳴り響いたそれは、負けた側の今までの努力,気力を折るのに十分な大きさだった。
 副部長(キャプテン)を筆頭に、部員達は呆然としてスコアボードを見る。
 部長(キャプテン)は、黙ったまま部員達の肩を一人残らず叩いて、ベンチに戻って来た。
 同級生でマネージャーの宮守に一度視線を向けた後、背を向けて自分のタオルを取り出す。
 あと1点で先に進めた。
 そんなスコアだった。


 ◇  ◇  ◇


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 部長が突然、雄叫びを上げる。
 学校に着きバスから降りた直後だった。
 会場からここまでの道のりでは、ずっと黙っていたのに。
 先に降りていた同級生や、後から降りて来た後輩達が、目を剥く。

『負けたショックでどこかやられたか』

 一同そう思いながら、動作をピタリと止め彼を見た。

「次はかああああああああああああああつッ!」

 空高く、部長の決意が轟く。
 唖然としていた部員達が、部長の意図を察するまでしばらく時間が掛かった。
 この人、負けて落ち込んでたんじゃない。
 次の試合に向けて、今から何をするべきか考えていたんだ。

「葛城ーーッ!」

 副部長で親友の葛城が、“わかったよ”と頷く。

「若葉ーーッ!」

 後輩で次期エースの若葉が、覚悟を決める。

「青木ーーッ!」

 この先、若葉を支えるであろう彼の親友青木が、親指を立てる。

「峯ーーッ!」

「イエッサーーッ!」

 チームのムードメーカーで、若葉たちと同級生の峯が大きく返事をする。
 そして最後に、部員達を見守っていたマネージャー宮守に、視線を投げた。

「宮守ーーッ!」

「ーー!ーーッうん!」

 自分が率いる部員達を前にして、部長は胸を張る。
 肺いっぱいに空気を吸い込んで、口を開いた。

「やるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 次は勝つ。

 試合をする前よりも強く、2年生と1年生だけになったチームは一つになった。
 3年生が引退してから、初めて出た大会の後の出来事だった。




end



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