倉庫

□死刑代行人
1ページ/3ページ


 地球暦3×××年。
 地球国、北極エリア。
 絶海の人工島刑務所食堂では、いつも通り囚人達が食事をしていた。
 ここの囚人達は全員、死刑に相当する事件を起こした者達である。
 だが、この国に死刑はない。国が定めた最高刑は、終身刑だ。
 刑によって、命を奪われる事はないのだが、囚人達は怯えながら刑務所で暮らしていた。
 その理由は、

「ギャァァァッ!」

 テーブルの一角から叫び声がし、囚人達が一斉にそちらを見る。
 その席に座っていたはずの囚人が、そこから忽然と消えていた。
 前触れもなく、突然。囚人達の居る場所で。
 残されていたのは、食べかけの食事だけ。

 囚人達は、絶海の人工島刑務所で怯えながら暮らしている。
 その理由は、いつその場から"消される"か分からないからだ。


 ◆  ◆  ◆


 ブライアン・ロベルトは、今日人工島刑務所に入所した囚人だ。
 三回に渡った裁判も終わり、終身刑が言い渡され、この刑務所にやって来た。
 終身刑を受けた囚人だけが入所するこの場所に。
 初めての食事を食堂でしていると、向かいにいた囚人が話しかけてきた。

「俺ァ、アレンって言うんだ。お前は?」

「ブライアン。ブライアン・ロベルト」

「ああ、薬(しゃぶ)やって、警察(さつ)に捕まった所を逃げ出して、逃げる時に何人か殺しちまったって事件の?あと強盗殺人だっけ?薬代盗みに入ったとかなんとか」

「詳しいな」

「デカい事件は、みんなして話してるからなー」

 豪快に笑いながら、アレンは話す。
 ブライアンは、アレンの話に興味ないそうで、適当に相槌を打ちながら、食事を続けた。

「あーっと、そうだそうだ。お前、この刑務所の噂話はもう聞いたか?」

「噂話?」

 ここで初めて、ブライアンは興味を持ち、伏せていた顔を上げる。
 その反応から察するに、まだ聞いてないようだなと、アレンは言葉を続けた。

「お前、刑務所の案内はもうされたんだろ?」

「ああ」

「不思議に思わなかったか?この刑務所に」

「何が言いたい」

 鋭い眼光を、アレンに向ける。
 アレンは特に怯む様子も見せず、口を開いた。

「囚人の数が少ないと思わなかったか?」

「……!」

 ブライアンは目を見開く。
 刑務所内を案内された時、予想よりも少ないと思ったからだ。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ