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□死刑代行人
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地球暦3×××年。
地球国、北極エリア。
絶海の人工島刑務所食堂では、いつも通り囚人達が食事をしていた。
ここの囚人達は全員、死刑に相当する事件を起こした者達である。
だが、この国に死刑はない。国が定めた最高刑は、終身刑だ。
刑によって、命を奪われる事はないのだが、囚人達は怯えながら刑務所で暮らしていた。
その理由は、
「ギャァァァッ!」
テーブルの一角から叫び声がし、囚人達が一斉にそちらを見る。
その席に座っていたはずの囚人が、そこから忽然と消えていた。
前触れもなく、突然。囚人達の居る場所で。
残されていたのは、食べかけの食事だけ。
囚人達は、絶海の人工島刑務所で怯えながら暮らしている。
その理由は、いつその場から"消される"か分からないからだ。
◆ ◆ ◆
ブライアン・ロベルトは、今日人工島刑務所に入所した囚人だ。
三回に渡った裁判も終わり、終身刑が言い渡され、この刑務所にやって来た。
終身刑を受けた囚人だけが入所するこの場所に。
初めての食事を食堂でしていると、向かいにいた囚人が話しかけてきた。
「俺ァ、アレンって言うんだ。お前は?」
「ブライアン。ブライアン・ロベルト」
「ああ、薬(しゃぶ)やって、警察(さつ)に捕まった所を逃げ出して、逃げる時に何人か殺しちまったって事件の?あと強盗殺人だっけ?薬代盗みに入ったとかなんとか」
「詳しいな」
「デカい事件は、みんなして話してるからなー」
豪快に笑いながら、アレンは話す。
ブライアンは、アレンの話に興味ないそうで、適当に相槌を打ちながら、食事を続けた。
「あーっと、そうだそうだ。お前、この刑務所の噂話はもう聞いたか?」
「噂話?」
ここで初めて、ブライアンは興味を持ち、伏せていた顔を上げる。
その反応から察するに、まだ聞いてないようだなと、アレンは言葉を続けた。
「お前、刑務所の案内はもうされたんだろ?」
「ああ」
「不思議に思わなかったか?この刑務所に」
「何が言いたい」
鋭い眼光を、アレンに向ける。
アレンは特に怯む様子も見せず、口を開いた。
「囚人の数が少ないと思わなかったか?」
「……!」
ブライアンは目を見開く。
刑務所内を案内された時、予想よりも少ないと思ったからだ。
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