蝶の王子様
□08
2ページ/4ページ
それと同時に、兵士に赤い針が何十本も落とされた。
パタリと、兵士はその場に倒れる。
ピクピクと体が痙攣し、呻いている事からまだ生きているのだろう。
アヤキは左手に持っていた扇子を上げる。
振り下ろした時、赤い炎が兵士を包んだ。
広間に居たメイドは反射的に目を瞑り、兵士達は悔しさに拳を握り締める。
気に食わない言葉を言っただけで、ここまでするのかこの女性は。
一番腹が立つことは、止めることも助けることも出来なかった自分自身にだ。
「さてと、少し外に出る。誰か、付いてきておくれ」
「はっ。では、カエン隊長を呼びに」
「いや、カエンは呼ばなくてよい」
扇子で自身を扇ぎながら言う。
訝しげな兵士に、クスクスと笑みをこぼしながら、アヤキは続けた。
「あやつは生真面目で面倒だ。私が留守だと知って後を追わないよう、残った者達で足止めしといておくれ」
僅かな兵士を連れ、アヤキは城の外へと向かう。
そんな彼女の行動を知らないカエンは、城の執務室で部下の作った書類に目を通していた。
一方、アヤキに麦茶を零し何度も肩を刺された女性と、コウランは医務室で面会していた。
.