蝶の王子様

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 それと同時に、兵士に赤い針が何十本も落とされた。
 パタリと、兵士はその場に倒れる。
 ピクピクと体が痙攣し、呻いている事からまだ生きているのだろう。
 アヤキは左手に持っていた扇子を上げる。
 振り下ろした時、赤い炎が兵士を包んだ。
 広間に居たメイドは反射的に目を瞑り、兵士達は悔しさに拳を握り締める。
 気に食わない言葉を言っただけで、ここまでするのかこの女性は。
 一番腹が立つことは、止めることも助けることも出来なかった自分自身にだ。

「さてと、少し外に出る。誰か、付いてきておくれ」

「はっ。では、カエン隊長を呼びに」

「いや、カエンは呼ばなくてよい」

 扇子で自身を扇ぎながら言う。
 訝しげな兵士に、クスクスと笑みをこぼしながら、アヤキは続けた。

「あやつは生真面目で面倒だ。私が留守だと知って後を追わないよう、残った者達で足止めしといておくれ」

 僅かな兵士を連れ、アヤキは城の外へと向かう。
 そんな彼女の行動を知らないカエンは、城の執務室で部下の作った書類に目を通していた。
 一方、アヤキに麦茶を零し何度も肩を刺された女性と、コウランは医務室で面会していた。

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