蝶の王子様

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「最近、何かと物騒だから」と、ユドンは続ける。
 つい先日も、ご近所さん達が大揉めに揉めて、大バトルが繰り広げられたそうな。
 連日続く独裁政治と重税に、みんなストレスが溜まっているのだ。

「名前は、クウラだっけ?」

「そ、そうです」

 ぎこちないなーと思いながら、ユドンは苦笑した。

「堅くなるなよ、俺の事は呼び捨てでいいからな。敬語も止めて、堅苦しいのは苦手なんだ。その代わり、俺もそうさせてもらうから」

 笑みを浮かべながら、ユドンは言う。
 クウラは戸惑いながらも、「わかった」と返した。

「術の使い方は至って単純。単純だけど、それが一番難しい」

 言いながら、ユドンは右手を前に差し出す。
 目を閉じ、集中し始めると、先程まで吹いてなかった風が吹き、木々や空いていた窓のカーテンを揺らす。
 力を解いたユドンは、「こんなの序の口だ」と言い、右手を庭に生えてる雑草に向ける。
 一文字に振ると、風で雑草が切れ、地面が抉れた。

「今のは、風を刃に変えたんだ。後は……」

 右の手のひらを上に向け、風を集める。
 風が密集し、徐々に形を変え、剣に変わった。

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