蝶の王子様

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 カツン、カツンと、ヒールで廊下を歩く足音がする。
 足音は一人分だ。
 廊下の窓からは日が射し、まだ昼間だと分かる。
 が、広い廊下を歩くのは一人だけ。
 他の人間が居てもおかしくない時間帯なのに……だ。
 目的の部屋まで着いたのか、足音が止み、変わりにドアが開く音がする。
 中に入れば、一面真っ白な壁が目に入る。
 窓には格子が付けられ、簡単には開けられない物だった。
 その窓の近くに敷かれた絨毯の上に、人が二人居る。
 長い金色の髪を持った女性サトラと、この国の王ケイラだった。

「また、此処に来ていたの?ケイラ。私という者がいながら」

 足音の主、アヤキが呆れた顔をしながら言う。
 ケイラは舌打ちし、不機嫌な口調で言葉を返した。

「あなたには関係ないだろう。捕られてないか確認する為だ」

「関係なくない。あなたの正妻は私なのだから。それに、今更その女を奪う奴なんていないだろう」

心配し過ぎなんだよ。

 腰に手を当てて、アヤキは言う。
 ケイラは鼻を鳴らして笑い、サトラの方に意識を戻した。

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