蝶の王子様

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 黒いマントの者に肩を掴まれてないと、吹き飛ばされそうだ。
 絶対に飛ばされまいと、クウラは無意識にマントの者のマントを掴む。
 マントの者は驚きで目を見開くが、直ぐ微笑を浮かべる。
 そして、クウラの肩から腰に腕を移動させ、脇に抱える格好をとった。
 暗く長い空間を、二人は進む。
 やがて、一筋の光が闇の中に現れる。
 徐々に大きくなり、二人を包み込んだ。
 暗闇からいきなり明るい世界へと、クウラは飛び出す。
 眼前に広がるのは、緑色の森と小さな町、青い海。
 空中にいると察した時には既に遅く、クウラは森へと落ちていく。
 先程までいたマントの者はいない。
 一直線に森へと落ちて行き、木の枝を折りながら、地面に落ちた。
 幸い、茂みがあった為、大事には至っていない。
 多少地面にぶつけた箇所と、枝で擦りむいた箇所が痛むが。
 ふらつきながら、クウラは立ち上がり、辺りを見回す。
 森の中に落ちたので、木ばかり。
 森の奥だというのが良く分かる。
 人の気配はなく、助けを呼べそうにない。
 大体、何でこんな目にあわねばいかないのか。

「あんの、黒マント……っ!」

 此処に来て、怒りが沸き上がる。

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