蝶の王子様
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十月だと言うのに、通学路の住宅街は、生温い風が吹き抜ける。
べっとりと肌に纏わりつく風だ。
クウラは不快に思い、足を止めて頬を触る。
頬はじっとりと汗をかいていた。
自分はそこまで汗っかきではない。ましてや、今は十月。
地球温暖化だなんだと騒がれても、激しい運動をしない限り、汗はかかない。
汗を拭い、クウラはまた歩き出す。
直後、行く手を阻むように風が強く吹き、クウラは遮るように腕を顔の前で交差させる。
風が収まり、腕を下ろしす。
その時、黒いマントに身を包んだ者が、真っ正面に立っていた。
「な……っ!?」
誰だ。
直ぐそこに居たのに、全く気付かなかった。
マントから離れようと、後ずさる。
が、肩を掴まれ、身動き出来なくなった。
「離せ!警察呼ぶぞ!」
「やっと、見つけた。さあ、帰ろう」
腕から逃れようと、暴れるクウラを押さえながら、黒いマントの者は呪文を唱えた。
二人を取り巻くように風が吹き、地面に底の見えない黒い穴が開く。
風に導かれるように、クウラとマントの者は穴に落ちた。
穴の中は暗い空間だった。
勢い良く落ちているので、轟々と耳元で風が唸る。
目も開けてられない。
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