蝶の王子様

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 また神が子を産んだのかと、神主は思った。
 いつもしている境内の掃除をしようと箒を手に持った時、足下から生まれたばかりの赤子が現れた。
 赤茶の髪と金色の目を持った赤子。
 現れ方が明らかに不思議で奇妙だったので、ただの人の子ではないと直ぐに悟った。
 そして、孫も含めた家族と共に、赤子を育てる事にした。
 それから十四年。
 神主に拾われた赤子は、成長してからも不思議で奇妙な子だった。


 ◆  ◆  ◆


 遠くの方から、授業の始まりを告げる鐘が聞こえ、クウラは目を覚ます。
 不思議な夢を見たが、内容は殆ど覚えていない。夢なんて、そんな物だ。
 ぐぐっと背伸びをし、キョロキョロと周りを見る。
 白い壁に、白い扉。備え付けられたトイレットペーパー。
 クウラは男子トイレの個室にいた。
 どうしてトイレかと言うと、単に落ち着くからである。
 誰にも邪魔されない空間が好きなのだ。
 鐘が鳴り止み、クウラは座っていた便器から立ち上がる。
 授業が始まってしまう。
 授業はだるく、嫌いな分類なので出たくないが、出ないと大人達が煩いので、仕方なく出ていた。
 学生服を着て、肩ほどまで伸びた黒い髪を靡かせ、クウラは廊下を歩く。
 黒い目は真っ直ぐ廊下の先を見ていた。

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