蝶の王子様
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それぞれの思いを抱えて、日曜日はやって来た。
朝の日差しが、島に降り注ぐ。
普段なら、とても気分が良くなる陽気だが、城の前には緊張した面持ちで、生徒会の生徒たちが集合していた。
開門までの時間、生徒会顧問から今日話す内容の確認と、段取り、注意事項が話される。
何度も確認した事なので、クウラは顧問の話を聞き流しながら、ポケットにしまっているメモの切れ端を握り締めた。
シンラに渡された、城の呪いを解く一族の言葉が書かれた紙だ。
時が来るまで、絶対に口にしてはならないと言われている。
その時とは、女王と国王の面会が終わり、自分たちが退室した後。
面会は、政府関係者が集まる会議の中で行われるので、女王たちは会議が終わるまで立ち入り禁止区域に戻る事はない。
会議にはカエンとコウラン、学校関係者としてカイラも出席する。
何かあれば、三人が王二人を足止めする手はずになっていた。
『遺品の在処は、俺の推測に過ぎない。確実にある場所を知っているのは、前女王だけだ。お前たちは、真っ直ぐ彼女に会いに行け』
前を見て、真っ直ぐ走れ。
何があっても立ち止まるな、振り向くな。
叔父の声が、頭の中で木霊する。
今回の目的は、あくまでも秘術に関する遺品の回収。秘術だけは、二人に渡してはならない。
人質の救出が目的ではないので、情報を聞いたら直ぐ逃げろと言われている。
紙を握り締めながら、クウラはサクラとレオンを横目で見やる。
ただ一緒にいただけなのに、大変な事に巻き込んでしまった。
今なら、まだ引き返せる。
ここに来る前に二人に言ったが、二人は首を横に振った。
『王子様が命かけて国を守ろうとしてんだ。それを支えるのが、俺たちの役目だろ?父さんたちみたいにさ』
『あんたたちだけじゃ不安だから、私も行く。一度殺されかけたし、今更でしょ?』
二人とも、笑いながらそう言っていた。
今、レオンは、緊張しているのか顔が強張ったまま固まっている。
サクラは真っ直ぐ城をを睨み、顧問の話に耳を傾けていた。
話が終わると同時に、門番の兵士が開門を知らせる。
「開門の時間です!」
「よし、みんな失礼のないよう礼儀正しく行動するように」
最後の注意が言い渡される。
顧問を先頭に、続いて生徒会長が門をくぐる。
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