蝶の王子様
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レオンとサクラが、瞬時に戦闘体勢に入り、レオンは右腕を、サクラは剣を振って炎を死体に放つ。
その火を援護するように、クウラが風を放った。
火と風が混ざり合う。
クウラの風と混ざった炎が蝶の姿へと変わり、集落を蠢く死体を焼き尽くすように羽ばたいた。
死体の焼ける臭いが、三人の鼻に届く。
嗅いだことのない臭いに、サクラは鼻と口を両手で覆い、吐きそうになるのを我慢した。
「うえー。大丈夫か?サクラー」
「あんたもね」
噎せてるレオンに、サクラは言葉を返す。
その間に、クウラは再び風を放ち、悪臭を退け、火と灰を払った。
集落に静けさが戻る。
「結構きついな。二人とも大丈夫か?」
「なんとかね。全力で使うとこんなに疲れるのかー。どうりで、訓練が必要なわけだ」
力を解除した途端にどっと疲れが押し寄せ、三人は胸の奥から息を吐き出す。長距離を全力で走りきった後のようだ。
さらに、異様な死体の姿とその死臭で気力を削がれ、精神的にも参ってしまった。
集落の隅で、体力が戻るのを待つ。
一番早く体力が戻って来たクウラが、口を開いた。
「そろそろ、帰るか」
「私、まだ動けない」
サクラが弱々しく答える。
その様子を見て、レオンがケラケラと笑った。
「なっさけねーなー。俺はもう大丈夫だぜー。おぶってやろうか?」
「結構よ」
と、強く断ると同時に、手のひらサイズの旋風を作り出して、レオンにぶつける。
小さいながらも威力は抜群で、平手打ちをくらったかのように、レオンは軽く吹っ飛ばされた。
「全然元気じゃないか」
ぽつりと、クウラは呟く。
その傍らで、サクラが一仕事終えた時のように両手をパンパンと軽く叩いた。
「帰るのはいいけど、あの壁は外れたのかしら」
「あ」
言われて気づく。
すっかり、頭の中から抜け落ちていた。
クウラは落ちていた石を拾い、森の道に向かって投げる。
障壁に阻まれる事なく、石は森の奥へと消えた。
「大丈夫そうね」
「だな」
「レオン、いつまで寝てるの?帰るわよ」
倒れているレオンに歩み寄り、起こすのを手伝う。
「誰のせいだ」と文句を言う声を聞きながら、クウラが風に当たっていると、生暖かい風が頬を撫でた。
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