蝶の王子様

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 秋の風が身に染みる帰り道。
 生徒会の集まりを終えたレオンは、クウラとサクラに挟まれて歩き、溜め息を吐いた。

「なんで、こうなった?」

「それは、こっちのセリフだ」

 レオンの言葉に、クウラが面倒くさそうに返す。
 サクラもふんと鼻を鳴らし、二人から顔を背けた。
 生徒会へのサプライズは、クウラ加入以外にもう一つあった。それは、サクラの加入だ。
 サクラが言うには、クウラが生徒会に入ると聞いてからカイラの所に行き、クウラとレオンが一緒に居ると何するか不安だと言って、無理を承知で加入希望したらしい。
 カイラはダメだと言おうとしたが、そこに件の王様が現れ、一言返事で加入を了承したそうだ。
 女の子がいると華があるとかなんとか。

「人を問題児みたいな言い方しやがってー。本当は城に行く口実が欲しかったんだろ?お母さんを探す為にさ」

「あら、よくおわかりで」

「無茶しやがって。城で働いてる大人に頼めば済む話だろうが。それに、コウランさんが無事だって、言ってたんだろ?」

「私は、自分の目で無事を確認したいのよ!」

 キャンキャンと、二人は言い合いをする。
 クウラは二人の会話を聞きながら、制服の襟を上げる。今日はやけに風が冷たいのだ。冬が近いというのもあるが、海が近く大きな建物がないのも理由の一つだろう。風が町の中までよく入る。
 寒いなと呟いた瞬間、生暖かい風が吹いた。
 本当に一瞬の事だったので、会話に夢中になっていた二人は気付いていない。
 クウラも気のせいかと疑う程だが確かに吹いた。
 そして、後から届き鼻を掠めた鉄の臭い。
 これは……血……?
 ピタリと足を止めて、風が吹いた方に目をやる。
 視線の先にあったのは、城下を囲むように茂っている森だ。クウラが島に来て、初めて来た場所もこの森だった。
 クウラが立ち止まっている事に気付き、レオンとサクラも足を止め、クウラを見る。

「どうしたんだ?クウラ」

「早く帰らないと、カエンさん達心配するわよ」

 二人の言葉には返さず、クウラは森を指差して問いかけた。

「森(この)先には、何がある?」

「森の先?」

 クウラに問われ、二人も森を見る。
 この先にあるものを、二人は知っていた。

「森の先には、黒緋一族の集落跡があるけど、」

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