蝶の王子様

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 父であるケイラ王の放った言葉に、カイラは目を見開いた。
 今彼は、王に今度開かれる生徒会との面談について話していたところだ。

「今、何て……!」

「聞こえなかったの?珍しいね。次は……ちゃんと聞けよ」

 次期生徒会の会長は、あの転校生だ。

 同じ言葉を繰り返され、カイラは唇を噛み締めながら、父を睨む。
 転校生といえば、一人しかいない。
 カイラが、この男に最も近付けたくない生徒。

 どうしてクウラを、生徒会長に指名したんだ。何を企んでいるんだ、この男は……!

 目の前に居る男は、ニコニコと笑みを浮かべて、カイラの返答を待っている。
 カイラは、心の乱れを直すように一度深呼吸をした後、口をゆっくり開いた。

「彼は、転校して来たばかりで、学校の事もこの国の事も、詳しく知りません。国の未来を担う会長職は重すぎると思いますが?」

「そうかな?俺は、彼が一番適任だと思うけど?それに、今の在校生に会長職に着ける身分の生徒がいるか?」

 それを言われ、カイラは口を閉ざす。
 会長になれるのは、七年生を除く高等部の四年生から。他にも条件がある。
 それは、王族の血が流れる者。
 該当者が無ければ、城の重役に着いている人の子供。
 これにも該当者が無ければ、成績優秀な生徒。
 今の在校生で一番会長に近いのは、空軍副隊長を父に持つレオンだろう。その為に、彼を生徒会に入れたと思ったのに。

「恐れながら、国王陛下。今年生徒会入りしたレオンではダメなのですか?彼の父親は、大変地位のある職ですし」

 一応言ってみたが、ケイラは首を縦に振らない。

「ダメダメ。カエンの息がかかってる奴の息子なんて。とにかく、クウラ君呼んでね」

 嫌とは言わせない笑みを浮かべて、ケイラは言う。
 色々と葛藤した末に、カイラは渋々頷き、ケイラの部屋を後にした。


 ◆  ◆  ◆


「……ッんの、たぬきジジィ!」

 自分の部屋に戻るなり、カイラはケイラを罵倒すると、書類を机の上に投げつけ、ベッドに横になった。
 日は完全に沈み、窓の外は暗い。
 ケイラと話し始めた時、外にはまだ日が出ていた。
 その事から、長い時間ケイラと話していたとカイラは気付く。
 長い時間話しても、ケイラの我が儘を止められなかった。
 あの男と話してから、自分の胸の中に黒い渦が巻くのをカイラは感じていた。
 この渦は、憎悪の気持ち。
 あの男に対する、憎しみと怒り。

「チッ、偽物め……!」

 王の椅子に座っていられるのも今のうちだ。
 こっちには、最後の切り札があるのだから。




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