蝶の王子様

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 そう言った男の髪は、色を染める前のクウラと同じ、赤茶色だった。
 玄関先で話すのは失礼だと神主は判断し、父親を客間の和室に通す。
 父親は、ケイラと言う名前だった。
 部下が用意したお茶を差し出す。
 襖の向こうから、部下たちが聞き耳しているのを感じながら、神主は口を開いた。

「えー……お父様、本日はどういうご用件で?」

「今日は、14年間クウラを育ててくれたあなたに、お礼を言いに来たんです」

 ケイラの言葉を聞き、神主は目を見開く。
 ついに来たか。この時が。
 カタカタとお茶の入ったコップを握った手が震えた。
 ケイラは何も言わずに、じっと神主を見る。
 しばらく、二人の間に沈黙が流れたが、神主の方からそれを破った。

「クウラは無事なんですかね……?全くと言っていいほど、帰って来る気配がないのですが」

「既に、国に帰らせています」

 本当は前もって知らせたかったのだが、急な出来事が起こる気配がしたので、先に連れて行ってしまった。
 と、ケイラは説明する。
 神主はやっと状況を受け入れる事が出来たのか、安心した表情を浮かべ胸を撫で下ろした。

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