蝶の王子様

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「こちらで対応するから、クウラ様と一緒に家で待ってなさい。絶対に、彼と女王を会わせてはいけないよ」

『でも、今のサクラは何をするかわかんねーぞ!』

 商店街を歩いていたサクラは、アヤキと兵士に気付かれないよう、右袖の中でクナイを作り出す。
 アヤキは背を向け、兵士は油断している。
 彼女を倒すなら、今だ。
 この人がいなくなれば、この国は滅びの道を歩まない。
 ユドンから無茶はするなと言われているが……、今しかないのだ。
 クナイを強く握り締め、左手を上げ竜巻を起こした。

「さっき、サクラと話したんだ。あいつの王族に対する怒りは本物だ」

 直後、風の唸る音に混じり、兵士とサクラの叫び声が家の中に届く。
 ユドンは商店街の方に顔を向け、クウラもリビングから飛び出した。

「何、今の!」

『ユドン、サクラだ!』

 受話器の向こうから、父が言う。
 受話器を投げ捨て、ユドンは表に出る。
 他の住民も、窓や玄関から外を覗いている。
 が、誰も助けに出ようとしていない。
 ユドンは声の上がっている方を見る。
 そこには、アヤキの髪に首を縛られ、宙ぶらりんになっているサクラと、兵士がいた。

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