蝶の王子様
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雨戸を急いで閉め、ユドンは階段を駆け下りる。
騒ぎに気付いたクウラが廊下を覗くと、ユドンが電話で城にいるカエンに連絡をとっていた。
カエンは今日、仕事で城に泊まる事になっている。
隣に住むコウランは、仕事で深夜帰りだ。
今この近辺に、女王と対等に話が出来る人間がいない。
一方、ユドンの連絡を聞いたカエンは、「有り得ない」と返し、執務室の窓から、電話を片手に商店街を見る。
アヤキと思わしき人物が、兵士とサクラを連れて歩いていた。
外出すると言う話を、カエンは聞いていない。
「まさか……」
こんな事をするとは。
あの女王にも困ったものだ。
『どうする?引き止めようか?』
ユドンは、これでも一応空軍の見習いとして、城に出入りしている。
アヤキとも、幾度か面会した事もあった。
が、ユドンの申し入れを、父は却下した。
「駄目だ、何を考えているか分からない。下手したら、逆鱗に触れる」
何を考えているか分からない相手には、近付かない方が良い。
それが、独裁女王のアヤキなら、なおのこと。
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