蝶の王子様

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 ◆  ◆  ◆


「ーーーーッ!無理……ッ!」

 風を止め、ベッドに倒れる。
 クウラの額には汗の粒が浮かび、肩を大きく動かして息を吸い込む。
 宙に浮いていた便箋がひらりと傾き舞い落ちたところをレオンが掴み取った。
 不安半分、期待半分といった表情で親友を見つめる。

「どうだった?」

「全然ダメ。何も見えなかった」

 深く息を吐き出し、寝返りをして天井を見つめる。
 風を読んで、手紙に隠された情報を見ようと思ったのだが、手紙は風に吹かれるばかりで何も教えてくれなかった。
 考えついた時は、上手くいくと思っていたのに。
 やはり、手紙はただの手紙で、何もないのだろうか。
 力を使って消費した体力を取り戻す為に、ゆっくりとした呼吸に切り替える。
 まだ慣れてないせいか、短時間の使用でも疲れを感じた。
 今までは命の危険があって、無我夢中で使っていたものだから疲れ知らずだったのだろう。
 力をがんがん使っている人たちの体力はどうなっているんだか。化け物か。
 この先、強くなるのに必要なのはまず体力だな。
 少しずつ、体力作りを始めよう。
 クウラが決意する傍らで、レオンが風を使って手紙を宙に浮かべる。

「お前がやってどうする」

「いやー。楽しそうだったからさー」

 ケラケラと陽気に笑う。

「楽しいもんか!」

 明るい彼の様子に、クウラは呆れた顔を見せた。
 それと同時に、真面目にやっている自分がバカバカしく思えてくる。
 少し気を緩めよう。
 焦りすぎて、見えるものも見えなくなっているのかもしれない。
 もう一度、落ち着いてからやってみようか。
 よいせと、反動をつけて起き上がる。
 その直後。扉を叩く音に続いて、サクラが顔を出した。

「お昼の時間だけど…………何してるの?」

 浮いてる手紙と風を出すレオンを見て、サクラは眉を上げた。

「風読み試してんの」

 レオンが答える。
 サクラの表情が険しいものに変わった。

「二人で?」

「二人で」

 冷めた視線を両者に向ける。

「私、あんまりやって欲しくないかも」

 扉を開けたまま、早々に部屋を出て行く。
 彼女の見せた様子に、少年二人は顔を見合わせた。

「何で怒ってたんだ?」

「さあ?」

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