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□ドラゴンようちえん
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「ソウスケ先生!」
びしりと、ソウスケは顔を赤くしたまま固まる。
噂をすればなんとやらだ。
声がした方に視線を向ければ、赤い髪の女性が扉から庭を覗き込んでいる。美しく整えられた眉が八の字になって、不安げな様子だ。
彼女の名前はリサ。ソウスケと同じ年齢だが、ここでの配属はつい最近という女性教諭である。
形の良い唇で弧を描いたまま、ミヤギという名の男は建物からソウスケが見えやすいように立ち位置を変えてやる。
「お呼びですよ、ソウスケ先生」
からかう声音で名前を呼ばれて、ソウスケは硬直していた身体をようやく溶かした。
頬をさらに赤くさせて、唾が飛ぶほどの声を吐き出す。
「おま……! 余計な事はしなくて良いんだよ!」
「ソウスケ先生?」
「今行きます!」
「この続きは後だ!」と言い置いて、ソウスケは走り去っていく。
慌ただしく去って行った若い教諭を、ミヤギは笑みを崩さないまま見送った。
複数の視線を下から感じたのはその時であった。
足元にいるドラゴンたちが、不安げな表情をしてミヤギを見上げている。
しきりにソウスケとミヤギを交互に見たり、ほっぺたを触るドラゴンを観察して、何を思っているのかを感じ取った。
先程までのからかいが含まれた表情(かお)を崩して、安心させる為の優しい笑顔に切り換える。
膝を折り、ドラゴンたちと視線を合わせた。
「大丈夫だ。ソウスケ先生は病気じゃない。リサ先生の前だとちょっと……いやかなりか……? まあいいか。リサ先生の前だと、照れて赤くなっちゃうんだ。あいつはリサ先生のことが大好きだからね。だから、大丈夫だよ」
ミヤギの言葉に、ドラゴンたちは顔を見合わせる。
まだまだ小さい彼らに、男女のあれこれは早かっただろうか。
口を結んだままドラゴンたちを見守っていると、ぱたぱたとまだ小さい羽根を動かして喜びを表現する。
そのまま小さな足を動かして砂場の方へと駆けていく小さな子達。
なんとか伝わったようだ。
ぺたぺたと、砂の教会を作り出すドラゴンたちに突っ込みを入れるかどうか迷ったが、楽しそうだからこのまま放置しておこう。
戻ってきたソウスケの反応が楽しみだ。
end
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