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□死期檻々
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夜勤開始の時間になり、ルプスは持ち場である囚人棟へと歩みを進める。
ふと、橙色の光が視界を掠めるようにして入り込み、足を止めた。
西の空に視線を向けると、色の濃い橙色に染まっている。
日は既に沈んだのだろう。
目を貫く強い光の元は見当たらない。
東の空に視線を向ければ、藍色の帳にちらほらと、米粒よりも小さな粒が散らばり始めていた。
息を吐き出せば、白いものが混ざりはじめている。
落ち葉も散り、夏には見えなかった枝の向こう側から、空の色がよく見えた。
夕焼けは、彼女の色だ。
夕焼けは、藍色の帳を連れてくる。
では、藍色の帳は何を連れて来るのだろう。
藍色の帳は、橙色を埋め尽くす以外に何が出きるのだろう。
浮かんだ疑問を、頭を振ることでかき消した。
止めていた足を再び動かし始める。
寒風が身を撫でるように抜け、もう直ぐ冬になるのだと教えてくれた。
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