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□夜空の川 2
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 今年も、願いを込められた光の球を乗せた笹舟が、たくさん流れていた。
 夜空の国には、夜空と同じ色をした川がさらさらと流れている。
 時折、水面の光が弾けて空に放たれていた。
 両岸を繋ぐのは舟だけで、橋は一つも架けられていない。
 昔は何カ所かに架けられていたのだが、娘の勤務怠慢に夜空の王である星大王がぶち切れて、全部壊してしまった。
 その後、年に一回だけならと、勤務怠慢の原因であった恋人との逢瀬を了承し、一日だけ橋をかけ直す。
 それが、地上で言われる七夕の日だ。
 今年もその日がやって来て、地上から舟に乗って届いた願い事が川を流れている。
 川の途中にある赤い桟橋で願い事は回収され、空へ放たれていた。
 桟橋の近くでその様子を見ていた星大王は、盛大な溜め息を吐いた。

「やる気でねー」

 桟橋に腰を下ろし、くでぐでとしながら空を仰ぐ。
 放たれた光が瞬いている。
 ぐったりとした自分とは正反対だ。

「何もやる気しねー。リア充しねー。今日はもう駄目だから、橋架けなくていいよね?」

 星大王の体調が悪いって事で。
 うん、そうだ。そうしよう。

 一人で決めて納得し、星大王は起き上がる。
 先ほどまでのぐったりとしていた様子はどこへやら。彼の顔色は晴れやかだ。
 肩の重荷を勝手に解いて身体も軽くなったのか、ひょいひょいと腕を動かしている。

「今日はもう働かないぞおおおおおおおお!アーハッハッハアアアアアアアアッ!」




 腰に手を置き、高笑いをする上司を部下たちは一歩退いて見つめていた。
 その目は呆れで半眼になっている。
 勤務怠慢の罰で橋をぶっ壊した張本人が、勤務を投げ出すとは。
 娘が聞いたら怒り狂いそうである。

「なんと……!」

 様子を見に、ばさりと羽音を立てて役人の肩に降りた星宿は、王の姿を目に入れて言葉を失ったのだった。
 他の部下同様、彼の目も半眼になったのは言うまでもない。







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