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□魔法少女の憂鬱
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深い緑色のおさげ髪を持った少女ミティは、深々とため息を吐いた。
カエルに囲まれている。
それも、自分の身長と同じ大きさの、緑色の体に水色の斑点があるちょっとグロテスクなカエルに。
ゲコゲコと鳴きながら、じりじりと間合いを詰められる。
少女はさらにため息を吐く。
「困りました……」
私、カエルは苦手なんだよなー。
目が大きくて、体がぬるぬるしてる所とか、足の形とか。
手に持っている箒を握り直し、目を伏せる。
魔獣危機管理室の仕事とはいえ、こんな魔獣と戦わないといけないなんて……、あとで上司に苦情を出してやる。お悩み相談室経由で。
意を決して、伏せていた目を上げる。
直後、カエルが口から体液を吐き出し、着ていたワンピースに付着した。
べちゃ、べちゃ。
次から次へと体液を吐き出される。
服だけでなく顔にもかかり、思考が一時停止した。
「ゲコゲコ」
「ゲコゲコ」
「ゲコゲコ」
笑っているような鳴き声だ。
ドロリと顔から垂れる体液を、ワンピースの上に着ていたエプロンで拭う。
決めた。力加減はなし。
そして、お悩み相談室だけでなく、弁護士にも話をしようと。
「もう怒りましたよ。オン、アギャミティサラミティ、アラウンジャヤソワカ」
箒に魔力を送り、箒から大鎌へと変える。
「消えよ魔獣、ソワタヤウンハッタ!」
大鎌を横一線に振り、魔獣を一閃する。
切り裂かれた魔獣の青い血液が体中にかかったが、服は既に汚れていた為、ミティは気にするのをやめていた。
ズバズバとカエルを切り裂いて行く。
気づけばカエルも居なくなり、ミティは大鎌を箒へと戻す。
地面に転がる残骸をどうしようかと、首を捻った。
「焼却処分……いや待てよ私」
せっかくなので、上司にやらせよう。
上司も近くで仕事をしていたし。
うんそうだ、そうしよう。
くるりと踵を返し、ミティはカエルの残骸が転がる現場を後にする。
「……お兄ちゃんでもいいかな」
どちらにしても、自分で後始末をするつもりはないミティであった。
end
メモにて、あとがきと軽い設定公開してます。