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□ネコの飼い主
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 卒業試験の為、人間界に向かった使い魔から最初の報告書兼手紙が届いた。
 普通に過ごしてても心配なのに、さらに心配させるような内容だった為、ちょっと様子を見に行ってしまおうかとも思ったが、直ぐその考えを払拭する。
 あの子は、試験で人間界に行っているのだ。邪魔をしてはいけない。
 手紙の文面から、元気に過ごしてる様子が伝わって来るし、大丈夫だろう。
 猫のイラストが書かれた便箋を丁寧に畳み、傍らにあるミニテーブルに置く。
 ほぅっと軽く息を吐いて、椅子に深く腰掛けた。

「リリー、入るよー」

 扉の向こうから、夫であるアシュレイの声が聞こえる。
 リリーは顔にかかった髪を払いながら、「どうぞ」と入室を促した。
 扉から銀色の髪を持った男が、ティーセットを持って入って来る。
 服装は昔から変わらない。上等な生地で出来たローブがキラキラと輝いている。
 相変わらず派手な男だと、リリーは微笑んだ。

「ネコから手紙が来たんだって?何て書いてあったんだい?」

「『幸薄い人間が多くて大変だー』ですって」

「ネコを拾った人間も大変だろうね」

 ネコを育てた二人が、今までの日々を思い出し、苦笑する。
 ネコは、拾った当初は中途半端な使い魔だった。
 使い魔の十八番である変身術も上手くいかず、学校の成績はいつも下から数えた方が早い。ネコなだけに性格もきまぐれで、勉学の集中力が続かないという短所もあった。
 それでも、ネコがここまで頑張ってこれたのは、持ち前の元気の良さと、二人の応援のおかげだろう。
 エリートと呼ばれた庶民出身の魔女と、王族出身の魔法使い。
 二人から色々な手ほどきと愛を受けて、ネコはみるみるうちに成長し、このほど卒業試験を迎えた。
 ここまで来たら、受かるかどうかは彼女次第だ。

「疲れただろう?クッキーでもお食べ」

「ありがとう」

 アシュレイからクッキーを受け取り、口に含む。
 ネコが居たら、クッキーの匂いを嗅ぎつけて、宿題を放り出して駆けつけて来るだろう。
 今日はそれが無くて静かだが、ちょっと寂しい。
 早く合格して帰って来ないかなと思いながら、二人で談笑しながら午後のティータイムを過ごした。




end



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