携帯
□07
1ページ/2ページ
パチパチと、マスターは買い物のレシートとにらめっこをしながら、電卓を打つ。
横から覗いていると、今月も食費は黒字のようだ。
「よし、今月は三千円貯金出来る!着々と貯まるー、旅行代ー。」
ウキウキ気分で、残った三千円を、財布に入れていたお年玉袋に入れる。
旅行代とは、旦那と行く新婚旅行代。
塵も積もれば山となる。
お年玉袋は、お札の束で少し盛り上がっていた。
「幾ら貯まったんだ?」
「うーんと、1万8千円。」
旅行代はまだ少ないが、行く頃にはそれなりに貯まっているだろう。
旦那の会社がボーナスを出してくれれば……、ついでに、給料も上げてくれれば……、ちょっとは楽な生活になるのにな。
マスターは、今も楽だと言っていたが。
住むところがあって、食べれる物もあって、好きな事して生活してるのだから、楽な生活だろう。
これ以上、良い生活は無い。
無いのだが……。
「今月、欲しい本があと二冊も出るのよねー。今月の遊べるお金、あと千円しかないや。」
千円だけでは買えない。
その時だった。
黒斗と遊んでいた旦那が、マスターが洗い物をしに行った隙に、自分の財布から千円出す。
.