携帯

□03
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部屋の一角で、旦那が黒斗を充電させる。
黒斗は頬が真っ赤で、うっつら、うっつらとし、目がとろーんとしていた。

「うーん、やっぱり調子が悪いなー。電波が入らないや。」

黒斗の髪をわしゃわしゃと撫でながら、旦那は言う。
マスターも、濡れた皿を拭きながら、心配そうに黒斗を見ていた。

「大丈夫?」

「無理かもしんないな。
一度、ショップに連れていくか。」

携帯ショップは俺達携帯にとって、人間でいう病院のようなもの。
状態が悪ければ、預けられる。
入院みたいなものだ。

黒斗は嫌なのか、ぶんぶんと首を振った。

「行かないと治らないぞ。」

「いきたくないー。ますたー、くろとだいじょうぶ。」

この状態で大丈夫と言われても説得力が無い。

旦那とマスターは顔を見合わせ、軽く息を吐く。
旦那の目は語っていた。

「明日、連れて行く。」と……。

「ショップかー。俺、マスターに貰われてから、一度も行ってないなー。」

ぐぐっと、背伸びをしながら、俺は言う。
ショップでマスターに貰われてから、早二年半。

体調を壊し、ショップに連れて行かれた事は一度もない。

マスターの扱いがいいのか、それとも俺が頑丈なのか。





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