携帯
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部屋の一角で、旦那が黒斗を充電させる。
黒斗は頬が真っ赤で、うっつら、うっつらとし、目がとろーんとしていた。
「うーん、やっぱり調子が悪いなー。電波が入らないや。」
黒斗の髪をわしゃわしゃと撫でながら、旦那は言う。
マスターも、濡れた皿を拭きながら、心配そうに黒斗を見ていた。
「大丈夫?」
「無理かもしんないな。
一度、ショップに連れていくか。」
携帯ショップは俺達携帯にとって、人間でいう病院のようなもの。
状態が悪ければ、預けられる。
入院みたいなものだ。
黒斗は嫌なのか、ぶんぶんと首を振った。
「行かないと治らないぞ。」
「いきたくないー。ますたー、くろとだいじょうぶ。」
この状態で大丈夫と言われても説得力が無い。
旦那とマスターは顔を見合わせ、軽く息を吐く。
旦那の目は語っていた。
「明日、連れて行く。」と……。
「ショップかー。俺、マスターに貰われてから、一度も行ってないなー。」
ぐぐっと、背伸びをしながら、俺は言う。
ショップでマスターに貰われてから、早二年半。
体調を壊し、ショップに連れて行かれた事は一度もない。
マスターの扱いがいいのか、それとも俺が頑丈なのか。
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