携帯
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◇ ◇ ◇
幼い頃に受けた傷。
見えない傷。
誰にも気付かれない傷。
とても痛い傷なのに、誰にも言えなかった。
◇ ◇ ◇
「ねぇねぇ。」
「沙羅、最近我が儘だぞ。」
ぴしゃりと、読んでた漫画本を閉じて旦那は言う。
テレビを見ていた俺と黒斗は、視線を旦那達に移した。
一体何があったのか。
マスターは旦那を呼んだだけなのに。
まあ確かに、最近のマスターは我が儘だったかな。
あれ食べたいとか、あれ見たいとか、こっち来てとか、パチンコ行くなとか……、旦那を振り回してばかり。
でもそれはマスターが……。
マスターは何も返さず、自室へと去って行く。
顔は見えなかった。
旦那はと言うと、また漫画を開いて続きを読んでいる。
昨日は確か、二人の立場が逆転していたっけ。
どうやって、解決したんだっけ。
ああ、そうだ。
マスターの方が折れたんだった。
という事は、今回は旦那が折れる番か。
「旦那ー、何もあんな言い方しなくたって。マスターは甘えたかっただけだぞ。」
「そうだよ、ますたー。」
どうやら、黒斗も気付いていたらしい。
旦那は気付いてなかったみたいだ。
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