携帯

□06
1ページ/3ページ


◇  ◇  ◇

幼い頃に受けた傷。

見えない傷。

誰にも気付かれない傷。

とても痛い傷なのに、誰にも言えなかった。

◇  ◇  ◇

「ねぇねぇ。」

「沙羅、最近我が儘だぞ。」

ぴしゃりと、読んでた漫画本を閉じて旦那は言う。
テレビを見ていた俺と黒斗は、視線を旦那達に移した。

一体何があったのか。

マスターは旦那を呼んだだけなのに。
まあ確かに、最近のマスターは我が儘だったかな。
あれ食べたいとか、あれ見たいとか、こっち来てとか、パチンコ行くなとか……、旦那を振り回してばかり。

でもそれはマスターが……。

マスターは何も返さず、自室へと去って行く。
顔は見えなかった。

旦那はと言うと、また漫画を開いて続きを読んでいる。
昨日は確か、二人の立場が逆転していたっけ。
どうやって、解決したんだっけ。
ああ、そうだ。
マスターの方が折れたんだった。
という事は、今回は旦那が折れる番か。

「旦那ー、何もあんな言い方しなくたって。マスターは甘えたかっただけだぞ。」

「そうだよ、ますたー。」

どうやら、黒斗も気付いていたらしい。
旦那は気付いてなかったみたいだ。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ