携帯

□4,5
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「マズい……。」

黒斗(携帯モード)を見ながら、蛍は呟く。
黒斗が映しているのは、沙羅の書いた携帯小説だ。
携帯小説には日常に起きた事を、面白おかしく置き換えて書かれている。
が、今回上げられた小説はかなり真面目で鍵まで掛かっている代物だった。
まあ、鍵は蛍にとっては簡単な物だったから問題じゃない。
問題は中身だ。

「完全に怒ってるぞ、コレ。」

黒斗の画面を待ち受けに戻し、蛍は喫茶店の椅子から立ち上がる。
ぶらぶらしている場合ではない。
早く彼女の所に行かなければ。

「ますたー。」

携帯姿の黒斗が、蛍の名を呼ぶ。
喫茶店を出た蛍は早足で車に向かいながら、問い掛けに応えた。

「何?」

「さー、おこってる?」

「ああ怒ってる、完全に怒ってる。俺に対して。」

(だから、早く帰らないと)

(おみやげかわないとね)
 

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