携帯

□03
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「何、呆然としてるの?」

風呂から上がったマスターの声が、俺と黒斗の耳に入る。
俺が説明しようとした時、黒斗がマスターに駆け寄り、口を開いた。

「ますたーがないた。」

「は?泣いた?」

「良いんだよ、黒斗。もう泣いてないから。」

「心配しなくて良いよ」と、頭を拭きながら旦那は言う。
それをじっと見たマスターは、黒斗を(無理矢理)寝かせ、黒影にも寝るよう言った。

「何でだよ!?」

「いいから、寝ろ。」

マスターは充電器を取り出し、携帯に戻った黒影に差す。
部屋にいる人間は、マスターと旦那の二人だけになった。

マスターめ、携帯に戻して充電器に差しても、俺の意識は残ってるんだからな。
電源を切られない限り。

マスターと旦那のやり取りを、俺は黙って見守る。

「マジで泣いたのか?」

「マジだよ。こんなに泣いたの久しぶり。」

言いながら、旦那はベッドでうつ伏せになる。
マスターから顔を隠す形だ。
あーだのうーだのと唸る旦那に、マスターは問うた。

「何で泣いた?」

「沙羅が優しすぎるからだ。」

「はあ?」





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