携帯
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「何、呆然としてるの?」
風呂から上がったマスターの声が、俺と黒斗の耳に入る。
俺が説明しようとした時、黒斗がマスターに駆け寄り、口を開いた。
「ますたーがないた。」
「は?泣いた?」
「良いんだよ、黒斗。もう泣いてないから。」
「心配しなくて良いよ」と、頭を拭きながら旦那は言う。
それをじっと見たマスターは、黒斗を(無理矢理)寝かせ、黒影にも寝るよう言った。
「何でだよ!?」
「いいから、寝ろ。」
マスターは充電器を取り出し、携帯に戻った黒影に差す。
部屋にいる人間は、マスターと旦那の二人だけになった。
マスターめ、携帯に戻して充電器に差しても、俺の意識は残ってるんだからな。
電源を切られない限り。
マスターと旦那のやり取りを、俺は黙って見守る。
「マジで泣いたのか?」
「マジだよ。こんなに泣いたの久しぶり。」
言いながら、旦那はベッドでうつ伏せになる。
マスターから顔を隠す形だ。
あーだのうーだのと唸る旦那に、マスターは問うた。
「何で泣いた?」
「沙羅が優しすぎるからだ。」
「はあ?」
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