倉庫

□魔王とスライム
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 ぬめぬめとした丸い物体が、光に照らされて怪しく輝く。
 赤、青、黄色、紫……。色々な色を持つ物体にあるのは、円らな目。
 うごうごと、テーブルの上に敷き詰められた物体を、魔王アキは恍惚に満ちた表情をして、物体を持ち上げた。

「ついに出来た……!」

 これを完成させるのに費やした時間は1ヶ月。
 魔法薬を延々と煮込み、ちょろっと召喚した死んだ動物の魂を魔法薬に突っ込み、さらにさらに煮込んでようやく完成させた。
 魔王アキ特製。対勇者妨害用のスライムである。
 ぷにぷにとした肌触りのスライムに頬摺りをしながら、アキは怪しい笑みを浮かべた。

「これを勇者が通る道に放ってやるわ!待っていろ!勇者!」

 魔王らしく高笑いを決めている時、スライムがまばゆい光を発したのだった。


 ◆  ◆  ◆


「ふむ。本日も良いふんわり加減だ」

 畳むのを終えて、まだほんのりと温かいアキの洗濯物に頬ずりした。
 ぴっちりとした執事服を身に着けた一見真面目な青年。
 だが、やっている事は犯罪に片足を踏み込んでいる。
 主の部屋に届けようと、洗濯物を抱え足を踏み出した時、執事セバスチャンのアキアンテナに届く物があった。

「む……!」

 彼女に何かあった。
 嫌な予感と共に、とても良いものが見れる気がする。
 自分の第六感は、この時の為に鍛えられているのだ。

「今行きます!」

 洗濯物を放り投げ、セバスチャンは彼女の居る部屋へと走り出した。


 ◆  ◆  ◆


 宙吊りになりながら、アキは盛大なため息を吐く。
 一体、どうしてこうなってしまったのか。
 自身の手足や胴体に絡み付くゴム状に伸びたスライムを見て、アキは顔を顰める。
 これでは、巷に広がる変態な本の変態なプレイではないか。
 こんな姿を、あの変態執事に見られたら、何を言われるか。
 どうにかして、この状態から打開せねば。

「魔王様!ご無事ですか!?」

「うげっ!」

 一番見られたくない男が、部屋の扉を蹴り破り突入して来る。
 アキとスライムの姿を視界に入れた彼は、目を見開く。
 間。

「グッジョーブ!」

「うるせええええ!」

 執事は狼狽える様子も驚く様子も見せず、ただ親指を立ててこの光景を賞賛したのだった。

「よしっ!次は、亀甲縛りいってみよう!」

「いかねーよ!この変態執事!」




end



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