蝶の王子様
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「まあ……」
コウランの頭に、サトラの姿が横切る。
サトラは普段は温厚な性格だが、ケイラといる時は良く口で言い争い、熱くなっていた。
二人は仲悪そうに見えたが、実際はその逆。
学校を卒業して直ぐ、二人は籍を入れた。
政略結婚とケイラは言っていたが、サトラは普通の結婚、政治的策略も何もないと語っている。
ケイラとサトラが言い争っている姿を思い出して、懐かしくなった。
いつから、おかしくなったのか。
コウランは、ケイラがいつアヤキと出会ったのか知らないのだ。
「昔は楽しかったわね。お花見とか、お祭とか。今は、やる余裕がないものね……」
窓の外を見つめながら、ユズカは言う。
コウランも外を見ながら、「そうだな」と返した。
「でも、過去ばかり振り返ってはダメね。ちゃんと前を見ないと」
現実を見ていたくなくて、過去ばかり見て逃避したい気持ちは分かる。
だが、それでは前に進めない。
嫌でも、前を見なければいけないのだ、進むために。
逃げ出したいのは自分だけではない。 国民の皆が、そうなのだ。
「頑張ってね、情報部の部長さん」
end
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