蝶の王子様
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突然連れてきて、放り出して、自分は姿を消して、勝手すぎるだろう。
「見つけたら、殴ってやる」
一発ガツンと、この拳で。
あの黒いマントだ。絶対に見つかる、見つける。見つけてやんよ、コンチクショー。
ぎゅうと右手の拳を握り、物騒な事を考えていた時、ガサガサと近くの茂みが揺れる。
音の方に反射的に振り向いたと同時に、一人の男が現れた。
背中の中程まである茶色の髪を首の後ろで縛り、左胸に流した男。
着ている服は黒を基調とした軍服で、赤の縁取りがされている。
黒い瞳はじっとクウラを見ていた。
「誰だ?」
「あなたこそ、誰?」
お互い警戒しながら、会話を交わす。
男の黒い瞳と、クウラの黒い瞳がぶつかる。
クウラの瞳は今は黒だが、本当は金色だ。
沈黙が二人の間を流れる。
その沈黙を破ったのは、男の背後から現れた男だった。
「おい、カエン。どうした?」
肩につくかつかないかの髪に、黒い瞳。
髪の色はカエンと呼ばれた男と同じ。
違うのは、着ている軍服の縁が青の所だ。
男の名は香月コウラン。
城の情報部の部長で、カエンとはいとこにあたる。
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