蝶の王子様

□03
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 突然連れてきて、放り出して、自分は姿を消して、勝手すぎるだろう。

「見つけたら、殴ってやる」

 一発ガツンと、この拳で。
 あの黒いマントだ。絶対に見つかる、見つける。見つけてやんよ、コンチクショー。
 ぎゅうと右手の拳を握り、物騒な事を考えていた時、ガサガサと近くの茂みが揺れる。
 音の方に反射的に振り向いたと同時に、一人の男が現れた。
 背中の中程まである茶色の髪を首の後ろで縛り、左胸に流した男。
 着ている服は黒を基調とした軍服で、赤の縁取りがされている。
 黒い瞳はじっとクウラを見ていた。

「誰だ?」

「あなたこそ、誰?」

 お互い警戒しながら、会話を交わす。
 男の黒い瞳と、クウラの黒い瞳がぶつかる。
 クウラの瞳は今は黒だが、本当は金色だ。
 沈黙が二人の間を流れる。
 その沈黙を破ったのは、男の背後から現れた男だった。

「おい、カエン。どうした?」

 肩につくかつかないかの髪に、黒い瞳。
 髪の色はカエンと呼ばれた男と同じ。
 違うのは、着ている軍服の縁が青の所だ。
 男の名は香月コウラン。
 城の情報部の部長で、カエンとはいとこにあたる。

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